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サービス産業の生産性を上げれば日本経済は様変わりする

サービソロジーと経営(2)経済はサービスで動いている

村上輝康
産業戦略研究所 代表 
情報・テキスト
今や日本経済の4分の3がサービス産業に支えられているという状況の中、なおも日本は「モノづくり立国」だといわれている。それは、いつ始まった産業価値観なのだろうか。それによって失ったものはないのだろうか。「経済はサービスで動いている」時代が生まれた経緯と、今の日本経済に必要な対応策を、産業戦略研究所代表の村上輝康氏が、サービソロジーの観点から紹介する。(全9話中第2話)
時間:13:53
収録日:2017/09/20
追加日:2017/11/16
≪全文≫

●「モノづくり立国」の産業価値観を生んだ70年代の経済成長期


 サービソロジーが企業経営や経済にとっていかに重要であるかをお話しするために「経済はサービスで動いている」というテーマを取り上げたいと思います。

 これは1955年からほぼ10年おきに日本の産業構造を表した図表です。これを見ると、産業というものがあたかも意志を持った生きもののように、環境に合わせて、明快な戦略を持ってどんどん変わっていっていることが、非常によく分かります。

 この系列のデータが取られはじめた1955年の段階では、日本経済の2割近くを農業が占めていました。製造業と建設業などの第二次産業も足すとおよそ53パーセントで、サービス産業は47パーセントほどしかありませんでした。

 1955年から1970年にかけては、日本経済が「奇跡の経済成長」を経験する時期です。その主役になったのは製造業で、55年におよそ27.5パーセントだった製造業は、70年にはおよそ34.8パーセント、つまり35パーセント近くまで拡張していきました。破竹の勢いの成長だったわけですが、おそらくこの時期に日本では「モノづくりが大事だ」「モノづくり立国」だという産業価値観が形成されていったのではないかと思います。


●2010年代現在、日本でも世界でも経済はサービスを軸にして動いている


 このように1970年の時点で製造業は拡大したのですが、サービス産業はおよそ47パーセントから51パーセントとほとんど変わりませんでした。ところが1980年代に入ると、製造業の方は韓国や台湾、中国との競争にさらされ始めて、どんどんシェアを落としていくのです。

 サービス産業は、およそ51パーセントから58.6パーセント、60.9パーセント、69.8パーセントと拡大して、2014年時点で74パーセント。つまり経済のおよそ4分の3がサービスに占められている状態になっています。一方の製造業は、1955年の27.5パーセントよりもシェアが小さくなり、およそ18.7パーセントです。現在の日本経済は「サービスで動いている」といっても過言ではない状態になっています。

 これは、日本だけの現象ではありません。米国は78パーセント、英国は78.4パーセント、ドイツは69パーセントと、サービス中心の経済構造が定着しています。先進国だけでなく途上国も入れた世界全体で見ても、現在第三次産業は64.4パーセントを占めています。世界経済で見ても、経済がサービスを軸に動き始めているといえるわけです。


●日本のサービス産業は生産性が低い


 これほど大事なサービス産業ですが、日本のサービス産業は生産性が低いという基本的な問題を持っています。

 このチャートは、横軸に労働力の比率を、縦軸に労働生産性を表し、その面積が付加価値の大きさを示すものです。一次産業、二次産業、三次産業という並びで、赤の点線で製造業の労働生産性を表しています。

 これを見ると、サービス産業の中には情報通信業や金融・保険業、専門サービス業のように製造業よりもはるかに高い生産性を記録している産業分野もありますが、運輸や卸・小売、娯楽、飲食、個人向けのサービス、介護・医療など、大半のサービス産業は製造業よりも生産性がかなり低いという現実が分かります。

 経済全体で見るとどうでしょうか。日本は2000年のGDPは世界第2位、2016年時点では中国が入ってきて第3位になっています。経済規模で見るとそういうことですが、一人当たりでは、2000年に4位だったものが、22位まで落ちてきています。これは日本経済全体としての生産性が低下しているということです。そして、その大半の原因はサービス産業の生産性の低さにあると見られます。


●グッズドミナント・ロジックとサービスドミナント・ロジックの違い


 このように、製造業と比べたサービス産業の生産性は低く、国際的に見ても低下しているという厳しい現実があります。なぜ、そうなってしまったのかが問題ですが、サービスの世界では2004年にいろいろなことが起こり、「サービスドミナント・ロジック」というパラダイムが提唱されました。

 その反対の「グッズドミナント・ロジック」がモノづくりのロジックですが、提供者である企業は「超軽量」とか「ポストモダンなデザイン」というように、自分が大事だと思う価値を全てモノの中に体現させて、価値の生産を行います。それをマーケットに出し、顧客は市場原理に従って、気に入れば買うし、気に入らなければ買わない。残ったモノはCO2を出すだけで、廃棄されるという仕組みです。

 それに対して「サービスドミナント・ロジック」は、提供者である企業は価値を生産することはできません。企業にできるのは、価値を提案することだけだということです。価値は顧客に内包されていて、顧客と企業との間の「価値共創(コ・クリエーション)」の中で価値が実...
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