安保法制はなぜてこずったのか
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
安保法制の審議は憲法審査会の議論で潮目が変わった
安保法制はなぜてこずったのか
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
安保法制の審議は、なぜあれほどてこずったのか。慶應義塾大学大学院教授・曽根泰教氏は、憲法審査会での「違憲」発言が世論に火をつけた点を重視する。加えて、本来ならば改憲すべき問題を、解釈変更で可能だとしたやり方にも問題は多かった。結果として、安倍政権が無理やり通した法案というイメージを国民は抱いたと曽根氏は指摘する。
時間:11分40秒
収録日:2015年9月15日
追加日:2015年9月19日
カテゴリー:
≪全文≫

●安倍首相は歴史に名を残したかった


 安保法制は、なぜこれほど時間がかかり、これほどてこずってしまったのかというお話をしたいと思います。

 一つは憲法問題がありますし、正面から集団的自衛権の解釈を変えるということが関係します。もちろん国際政治から、あるいは世界の安全保障の問題から議論した方がいいとは思いますが、この安保法制の議論に関わったある学者が、「憲法問題から入らない方が良かったのではないか」とつくづく言うのですが、実は私はそうは思っていません。

 安倍晋三首相は、憲法問題と集団的自衛権をやりたかった。なぜやりたかったのか。それは、歴史に名前を残したかったからです。通常の法律制定で間に合うはずのものを、憲法や集団的自衛権などという大上段から振りかぶったというのは、安倍首相は、実は名を取りたかったのではないかと思います。

 名を取って実を捨ててもいい。実を捨ててもいいというのは何かというと、高村正彦自民党副総裁に任せた時には、「限定的な集団的自衛権」と言いました。これは石破茂幹事長(当時、現地方創生担当大臣)の主張とは若干異なるし、高村副総裁であれば公明党との関係もうまくいくだろうということで、限定的というごくごく狭い範囲の集団的自衛権ということを議論したかったのだろうと思います。


●論争の発端は憲法審査会の「違憲」発言だった


 それで、昨年の2014年7月1日に閣議決定がなされるわけですが、その時にはあまり議論されなかったのに、なぜいま憲法がこんなに改めて問われているのかと思う人がいると思います。実は、ロジックは昨年の閣議決定も今年の安保法案も同じなのです。確かに砂川判決、あるいは1972年の政府見解などを出された当時は、「集団的自衛権は無理だ」とされ、それらは個別自衛権の話でした。それに対して昨年の閣議決定では、その判決や政府見解を、集団的自衛権や解釈改憲ができるという根拠として使っているわけですね。

 ですから、昨年の閣議決定の時にも、「砂川判決では根拠として無理であり、控えてくれ」と公明党は言っていました。でも今年改めて、また砂川判決を出してきた。これには特に、高村副総裁が外相当時の砂川判決に非常に固執していたところがあります。

 ところが、流れが大きく変わったのが2015年6月4日の憲法審査会です。さらに、6月15日の記者クラ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
政治思想史の古典『法の精神』と『社会契約論』を学ぶ(1)二人の思想家
モンテスキューとルソー…二人の思想家の共通の敵とは?
川出良枝
お金とは何か?…金本位制とビットコイン(1)お金の機能とその要件
お金の「3大機能」とは何か? そしてお金のルーツとは?
養田功一郎
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(1)最新研究から見えてくる未来像
AI大格差…なぜ日本の雇用環境では「ショックが大きい」のか?
宮本弘曉
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
第2次トランプ政権の危険性と本質(1)実は「経済重視」ではない?
トランプ政権の極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視
柿埜真吾
経済社会と「隠れた価値」の行方(1)経済の中の価値
人間の幸福と「価値」…お金以外の「隠れた価値」をどう考えるか
吉川洋

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(30)AI時代の企業と道徳
【10minで考える】CPO(最高哲学責任者)…AI時代に必須の哲学とは
テンミニッツ・アカデミー編集部
資本主義の再定義…哲学で考える(1)アダム・スミスの「市場と感情」
資本主義を哲学する…まずアダム・スミスの見えざる手と道徳感情論
中島隆博
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(2)教義の宗教と覚りの宗教
キリスト教は教義の宗教、仏教は覚りの宗教…仏教はなぜ普遍宗教か
橋爪大三郎
徳川将軍と江戸幕府~井伊直弼編(1)桜田門外の変と井伊直弼の人物像
「桜田門外の変」の謎…井伊直弼の警護に問題はなかったのか
山内昌之
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
新撰組と幕末日本の「真実」(6)新撰組結成と清河八郎、芹沢鴨
清河八郎と芹沢鴨…乱闘事件や大和屋焼討事件の真相とは?
堀口茉純
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
中国春秋戦国時代と始皇帝(7)始皇帝を支えた家臣たち
始皇帝を支えた家臣たち…史実からいかに実像を描いていくか
鶴間和幸
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保