●新興国通貨はメキシコペソとの対比で見るべし
三つめの観点として、ブラジルレアルの反発をメキシコとの関係で見てみましょう。これは、ブラジルに限らず、インドネシア、トルコ、南アなどに投資している投資家や進出している企業に話すことなのですが、「あなたが投資している国がインドネシアであれ、トルコであれ、南アであれ、ブラジルであれ、メキシコペソを必ず見ておいてください」と申し上げます。なぜならば、メキシコペソこそがやはり新興国通貨の雄であり、なおかつアメリカの経済政策の変化を非常に過敏に織り込む傾向にあるからです。
ですから、例えばブラジルレアルが売られたときに、われわれがまず最初にすることは、メキシコペソも売られているかどうかを見ることです。レアルもペソも両方売られている場合は、その要因はブラジル固有ではなく、アメリカを中心としたグローバルな要因なのだという見方をしなければなりません。また、もし南アランドが買われた場合も、必ずメキシコペソを見ます。南アランドもメキシコペソも両方買われていれば、これは南ア固有の要因ではなく、メキシコを筆頭としたグローバルな要因で南アランドやメキシコペソが買われているのだと判断します。
逆に言うと、ブラジルレアルが売られたときにメキシコペソが売られていなければ、そのとき初めてブラジル固有の要因があるのだろうという考え方をすべきですし、南アランドが買われてメキシコペソが買われていなかったら、そこで初めて南ア固有の理由で南アランドが買われているのだという見方をしなければなりません。ですから、メキシコペソとの対比でそれぞれの新興国通貨を見ることが極めて重要になってきます。
●2月のメキシコ通貨防衛策はレアル反発の暗示だった
そういった中、ブラジルレアルが3月に入って反発が始まる前、2月17日にメキシコ政府とメキシコ中央銀行が共同声明を発表して、通貨防衛策を強めていきました。1)メキシコ中銀の利上げ、2)為替介入方法の変更、3)財政政策の一層の引き締め、4)メキシコ石油公社(ぺメックス)の投資計画の削減、この四つからなる通貨防衛策すなわち緊縮政策を発表しました。これによって2月の後半にメキシコペソが反発する動きが出ました。実はメキシコペソは、新興国通貨の中では流動性が優れています。そのため、例えばブラジルやコロンビアに投...