「逆オイルショック」とソ連崩壊
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ペレストロイカの意外な引き金は「逆オイルショック」
「逆オイルショック」とソ連崩壊
政治と経済
岡崎久彦(外交評論家)
「オイルショック」は誰もが知るが、「逆オイルショック」は今や忘れられた現代史の1コマだ。しかし、この現象こそソ連崩壊から日本のバブルをも誘因したと岡崎久彦氏は振り返る。世界史の裏に動いた情報外交の姿を垣間みる。
時間:10分07秒
収録日:2014年3月26日
追加日:2014年4月24日
カテゴリー:
≪全文≫

●ペレストロイカの意外な引き金は「逆オイルショック」


岡崎 資源依存の経済は、需要が減ったらガクっときて、どうしようもなくなってしまいます。現に1985年には石油の「逆ショック」がありました。もうほとんどの人の記憶にはないですが、私自身は非常に密接に関わったからよく知っています。実はそれで石油経済がつぶれるとともに、ペレストロイカも始まります。

―― ペレストロイカになるのは、「逆オイルショック」の影響なのですね。

岡崎 はい。実質的に翌1986年の前半から始まっています。日本は石油が安くなってただ喜んでいただけですが、「逆オイルショック」がどれだけ激しいものだったかは、私はサウジアラビアにいたから知っているのです。

―― そうか、先生はそのときサウジ大使(駐サウジアラビア日本国特命全権大使)をなさっていた。

岡崎 そうです。実は私は、ソ連邦をつぶしたのは、レーガンの宇宙戦争・スターウォーズ計画(SDI)と私だと思っているのですよ。

―― それは、面白そうなお話ですね。


●油価の乱高下と「ネットバック方式」


岡崎 石油ショックは、70年代に2回あります。ずっと1バレルあたり2、3ドルだった石油価格が、1973年の第1次石油ショックで12ドルまで高騰します。2回目は、70年代の終わりにイラン革命が起こり、イラン・イラク戦争が勃発したため、20数ドルから30ドル以上まで値上がりします。ところが、上がり方が急激過ぎたもので、産油国はだんだん安売りをするようになるのです。

 それで、OPECが価格の維持に乗り出します。サウジアラビアが「23ドルは切ってはいけない。それでオイルグラッドになったら、うちが減産を引き受ける」と言い出します。ところが、どの産油国も23ドルではつらくなり、皆「○○ボーナスだ」と言い出して値引きするのです。油価は値下がりし始めて、20ドルくらいになってしまいました。

 ところが、サウジアラビアだけは頑張って、23ドルラインを譲らない。それでモービルやエクソンなど、アメリカのメジャーが「どうにかしてくれ」と悲鳴を上げます。そこで始まったのが「ネットバック方式」です。

 これは、メジャーの会社が石油を掘ってアメリカに持ち帰り、ガソリンに精製して販売する各プロセスに利潤を足した上で、最初に買った値段を払うシステムです。ですから、メジ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
2025年、どん底日本を脱却する大戦略(1)日本が凋落した要因を総覧する
日本凋落の「7つの要因」と「10の復活大戦略」
島田晴雄
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプの動きを止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦

人気の講義ランキングTOP10
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(2)国家戦略目標の転換
経済発展から「国家の安全」へ…転換された国家戦略目標
垂秀夫
編集部ラジオ2025(22)長谷川眞理子先生の「子育て」講義
生物学からわかる「ヒトの配偶や子育て」で大切なこと
テンミニッツ・アカデミー編集部
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
経験学習を促すリーダーシップ(4)成功を振り返り、強みを伸ばす
なぜ強みが大事なのか?ドラッカー、西田幾多郎の答えは
松尾睦
大人の学び~発展しつづける人生のために(1)「Unlearn(アンラーン)」とは何か
見方を変える!生き方を変える!そのためのアンラーン
為末大
「集権と分権」から考える日本の核心(7)人間の性と今後の「集権と分権」
ロシアを見れば明らか…正義を唱えても優るのは人間の性
片山杜秀
チームパフォーマンスを高める心理的安全性(1)心理的安全性が注目される理由
なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る
青島未佳
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(1)各国の財政と国民負担
日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い
養田功一郎
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏