激動する世界情勢と日本
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
シェール革命と新興国の低迷が招いた「逆オイルショック」
激動する世界情勢と日本(2)止まらない原油安の背景
政治と経済
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
昨今の異様とも言える原油安が、日本および世界経済に大きな影響を与えている。千葉商科大学学長・島田晴雄氏によれば、この「逆オイルショック」の背景にあるのは、アメリカのシェール革命と新興国の経済成長鈍化だ。特に中国は、「中進国の壁」にぶつかり、従来の高度成長路線を見直す時期に来ている。(2016年1月26日開催島田塾第131回勉強会島田晴雄会長講演「年頭所感 激動の世界経済と日本」より、全10話中第2話)
時間:9分30秒
収録日:2016年1月26日
追加日:2016年4月25日
≪全文≫

●新興国台頭と情勢不安が原油価格を押し上げた


 まず「逆オイルショック」について考えてみたいと思います。逆オイルショックはなぜ起きたか。2000年代初頭にITバブルがありました。原油価格はこの直後、2003年くらいはとても安かったのですが、そこからずっと上昇し始めました。2008年7月はそのピークだったと思いますが、ニューヨークの原油相場、いわゆるウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)では、145ドルをつけていました。それから、ロンドンの市場では、欧州産ブレンドが146ドル。それからドバイが141ドルということになりました。

 この背景は何かというと、BRICsと言われる新興国が目覚ましい発展を遂げていて、長期的には、地球上における先進国のシェアを上回るのではないかという思いが、当時の一般的な考え方だったと思います。2008年にリーマン・ショックがあって、一時どーんと石油価格が落ちたのですが、そういう考えもあるものですから、ほどなく復調しました。

 さらに言えば、中国がすごいと思われた。それからブラジルが、リーマン・ショック直後に最も早く回復しているのです。だから、新興国はロバストで、無傷であると思われた。当時「デカップリング論」が流行りました。「先進国が駄目になっても、新興国は別だ」という議論があったのですね。

 原油相場がどうやって決まっているか。ここにいる皆さんには釈迦に説法ですが、これは市況ですから、実需、需要供給の人が、将来にヘッジするために先物を買ったり売ったりするわけですね。この実需の人が先物を売り買いするときに、相手方が必要なのですね。売るときは買う人、買うときは売る人が必要ですね。

 それを誰がやっているかというと、かなり大規模な機関投機家です。これが参入してやっています。投機筋は、その決済の日の前に、売ったら買う、買ったら売るをしなければいけないのですが、反対取引をして、差額を確定するわけです。上がるときも下がるときも、その差額でもうけたいのです。そこでどうするかというと、この人たちはリスク・テイカーですから、思い切ってオーバー・シュートをするような傾向になった方が、どちらになってももうけを取ることができるのです。ですからどうしてもこの先物取引というのは、上へも下へもオーバー・シュートするという傾向があると思います...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮
独立と在野を支える中間団体(1)「中間団体」とは何か
なぜ中間団体が重要か…家族も企業も学校も自治会も政党も
片山杜秀
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
アンチ・グローバリズムの行方を読む(1)世界情勢の転換
強まるアンチ・グローバリズムの動きをどう見ればいいか
岡本行夫

人気の講義ランキングTOP10
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(1)各国の財政と国民負担
日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い
養田功一郎
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す
狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き
長谷川眞理子
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(2)イノベーションとプロセスの質
「プロセスの質」こそがイノベーションの結果を決める
遠山亮子
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
不便益システムデザインの魅力と可能性(7)不便益の意義と発想方法
「のらカフェ」は「不便益×食」から生まれたアイデア
川上浩司