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最大の危機は、成長のための自由な議論ができないこと

激動する世界情勢と日本(10)成長戦略への10の提言

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
成長戦略の策定に向けた議論
首相官邸ホームページ(http://www.kantei.go.jp/jp/headline/seicho_senryaku2013_old.html)より
千葉商科大学学長・島田晴雄氏が、これまでの議論を踏まえ、日本の異次元的成長戦略のため、10の提言を行う。自然エネルギーや農業、雇用、医療など幅広い分野にわたり、日本はまだまだ可能性を持っているのに、そのための議論が自由闊達に行われない。これこそが、最大の危機である。(2016年1月26日開催島田塾第131回勉強会島田晴雄会長講演「年頭所感 激動の世界経済と日本」より、全10話中最終話)
時間:09:40
収録日:2016/01/26
追加日:2016/05/23
≪全文≫

●異次元的成長戦略(1)自然エネルギー推進と農業改革


 異次元的成長戦略を徹底的にもたらすために必要な10個の提案があります。一つは、今しばらくは原発を再稼働しなければいけませんが、エネルギーを完全に自然エネルギーにしていくというものです。

 ただ、この場合、一番重要なのは何か。原発や火力発電というのは「点」ですが、それに対して自然エネルギーは「面」なのです。自然エネルギーとして活用するのは、野原や海、空ですから、一番役に立つのは、過疎地です。人が住んでいないところが一番良い。そういうところで今の買い取り価格でやった場合、試算によれば北海道などは農業をやっているよりも利幅が大きいのです。あそこは、風力発電でたくさんの電力が出せます。地熱でも出せます。

 ですが、最大のネックがあります。送電線です。日本で最も太い送電線は、東京電力の柏崎刈羽発電所、それから福島第一原発と第二原発に太い線があり、あとはほとんど細いものです。しかも電力会社は仲のいい関係とは言えないので、接続のところが全くうまくいかないのです。しかし、これらをつなげないと、自然エネルギーをいくらつくっても消費者には届きません。

 それから、ITはもちろん徹底的に勧めます。さらに農業改革です。農業改革は、良いところまで行っていますが、途中で止まっています。私は、今こそ平成の農地改革が必要だと思います。なぜかというと、農村人口がすごく減っており、米作農家は平均年齢70歳前後です。例えば、おじいさんの方が死んでいると、おばあちゃんだけが残りますので、買い物に行くと言っても、往復2時間の道のりの場合、バスに乗っていくのですが、雪が降ったらもう行けないといった状況になっています。

 そこで、今こそ全部の農地を改革した方がいいと思います。戦後の農地改革と逆です。戦後の改革は、地主の土地を小作農に分けたものですが、今度は土地が余ってしまい耕す人がいないのですから、全部を企業か大農が借り受けて、十分な経費を払い、ヘリコプターで耕せるような形にしたら、これで日本の農業は大いに盛り上がります。

 それらを日本の地方創生の背後でやってくれればいいのです。先ほどの送電線を通すにしても、北海道や東北、四国、中国地方でやれば、その地域の所得が増える可能性が大きく上がります。送電線の敷設に必要な費用は、全部大都会が...
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