●アベノミクスの成果(1)第一の矢と第二の矢
最後に、輪を閉じて日本経済に戻ります。もう一度復習になりますが、アベノミクスの成果としては、第一の矢は一応上がりました。株価が上がり、一気に利益が出ました。アベノミクスで利益が増えた分は、税収から逆算すると約30兆円になります。だから、企業社会は元気になったと思います。ただ、350兆円のベースマネーをどう吸収するのか。これが大問題ですね。
第二の矢は財政です。財政についてですが、日本は2010年に財政再建公約というものを世界に向かって出しています。野田佳彦さんが、民主党議員180~90人近くの政治生命を失ってでも実行したかったのが、消費税増税です。なぜかというと、政府にも財政再建の気概があるということを、たった数パーセントの増税で見せたかったからです。野田さんは正直な人ですから、そこに政治生命を賭けたのです。そのぐらい、財政問題は重要なのです。
現在、どうなっているのか。2010年に基礎的財政収支で対GDP比6.6パーセントあった財政赤字を、2020年にはゼロにする、あるいは黒字にするというのが目標です。2015年は中間点ですから、3.3パーセントにするという約束をしました。少し税収が上がったものですから、2015年はぎりぎり軌道上を走っていますが、今年から外れてしまいます。さらに2020年には大きく外れます。
昨年まで、20年度の基礎収支は11兆円のマイナスということになっていました。内閣府がすでにレポートを出してしまいましたが、これは世界中が見ているので、それは大変なことだと受け取るのではないかと思います。そのことを財務省に質問したら、その幹部が「日本人は真面目だから理解していただけると思います」と言ったので、二の句が継げなかったのですが、これはその程度の問題ではないと思います。
ギリシャはうそをついたから問題になりました。日本のGDPはギリシャのおよそ22倍です。政府の財政赤字比率も、ギリシャは170パーセントですが、日本は240パーセントですから、尋常ではないことになると思います。財政再建困難と判断されれば、最もあり得べきことは、国債暴落していくことです。そうすると、金利が跳ね上がります。そうすると、GDPの2倍以上ある財政赤字が急激に増えだします。これは第二次世界大戦後以上でしょう...