●中国はアメリカに「太平洋の2国管理」実現を求めた
ところが、成熟段階に入ったことが明らかな中国経済を背景に、習近平主席にはどうも世界戦略があるようなのです。習近平さんは2013年の春に国家主席になりましたが、その年の6月に、カリフォルニアに行ってバラク・オバマさんを訪ねた。パーム・スプリングスという、ゴルフ場のメッカのようなところです。そこで2日間、会談をしました。お互いにカウボーイハットをかぶったり、草に寝転がったりなどいろいろして、ネットで8時間も語ったそうです。その時に習近平さんは、一生懸命「新型大国関係を認めてくれ」と言ったそうです。それから、「広い太平洋は、2国で管理できるではないか」とも言いました。
これはどういう意味か。確かに太平洋は広い。ハワイ辺りに南北に線を引いて、そこから西は中国が管理する。東はアメリカがやりなさい、ということです。「そこから西」と言った場合、日本が入っているなどそんなことは眼中にありません。「日本は中国の属国だ」というお考えなのでしょう。これは中国が覇権を非常に強く追求しだしたことだと、アメリカ側も十分に察知しているわけです。
1990年代、鄧小平さんは、天安門事件で戦車隊が出て若者を轢き殺してしまったようなことを容認していたわけですね。鄧小平さんは直接の責任者ではなかったのですが、彼が一応最高トップですから、世界中から大変な非難を浴びて、もう本当に頭を低くして今はもう我慢我慢で、内に実力を貯めようということを主張したのです。これが、彼の安全保障外交戦略の基本になります。これを「韜光養晦(とうこうようかい)」と言います。才能を隠して内に力を蓄える。中国はこれでずっとやってきたのです。
ところが、習近平さんになったら、何かが変わり出しました。習近平さんは、大演説の前に必ず「ヂョン グゥオ モン」と言うのです。日本語で「中国の夢」となります。いわゆる「アメリカンドリーム」のように、「きれいな奥さんで素敵な家に住めばいい」といった、そんな軽い話ではありません。もっと深いのです。「170年の汚辱を晴らし、いよいよ本当の中国になる」と言っているのです。
●中国の世界戦略に対するアメリカの警戒
オバマ大統領は、さすがにこれには警戒しています。この「新型大国関係」を翻訳するにしても、絶対に「大国関係」とは言...
米国イージス駆逐艦「ラッセン」(2015年10月27日)