●世界経済市場の中心的な話題に「原油安」がある
はじめまして。シティグループ証券で為替相場のリサーチを担当している高島修と申します。シティグループは世界最大の為替バンクの一つで、私はそこで日本国内外の投資家や企業と実際に接する立場にあります。ですから、私がここでお話しする機会があるときは、理論よりも実際のマーケットや世界経済で何が起こっているかにフォーカスしながらお話ししていこうと思います。
今、為替市場を含めたマーケットの中心的な話題に「原油安」があります。昨日(2015年1月5日)も、アメリカのWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト)原油先物価格が50ドル台を割り込む動きがありました。昨年7月頃から原油相場が持続的に下がっていますが、下げのピッチが比較的急なために、市場の関心がどんどん高まっています。今回の特徴は、原油安によって市場のセンチメント(市場心理)が非常に悪化していることです。今日は、この原油安をテーマに、マーケット、為替相場をどのように考えるべきかをお話しします。
●第一の理由は新興国を中心とする需要の伸び悩み
最初に、今回の原油安の理由や背景として、市場の中で指摘されていることを三つほどご紹介します。一つ目に需要サイドの理由として、中国をはじめとした新興国経済の成長の鈍化に伴って、原油や資源の需要が伸び悩んでいることが挙げられます。また、技術革新の結果、世界中でエネルギー効率が上がっている点も、原油需要が弱まっている理由と言われています。
●シェール革命、イラン、過剰投資が拍車をかける
二つ目に、供給サイドの理由があります。いくつかポイントがありますが、市場の中で最も注目を集めているのはアメリカのシェール革命です。従来取り出すことが難しかったシェールガスやシェールオイル(タイトオイル)の抽出技術が実用化され、アメリカの原油エネルギー生産量が数年間でうなぎ上りに増加しています。向こう数年で、アメリカの原油生産量はサウジアラビアを抜いて世界最大になるとも言われています。
それ以外では、原油の供給が止まっていたイランやリビアで、昨年辺りから徐々に輸出量が上向いていることも指摘されています。特にイランは、2013年8月に穏健派のローハニ政権が誕生し、欧米諸国との核開発協議を始めました。そのため、近くイランが世界...