●1990年代と2010年代の世界経済の類似性
今回のお話で、最後の論点となってくるのは、こういった原油安による市場の混乱が、実は過去にも起こったということ、特に1998年あたりに非常に似た事態が起こっていたこと、その類似性に注目したいと思います。
ここでキーワードになってくるのは、「ロシア危機」と「LTCM危機」です。これは98年に起こったものです。これがどのような背景で起こったのかを説明します。
基本的には、1990年代の世界経済は、比較的いい時期でした。特に90年代の後半には、アメリカにおいてIT革命を中心としたニューエコノミーブームが発生しました。これによってアメリカ経済が成長率を強めて、世界経済もその恩恵を被るということが起こったのです。アメリカ経済が比較的強いものですから、アメリカの中央銀行にあたるFRBは、利上げ高金利政策をやりました。
●90年代後半の長期的ドル高から、98年ロシア危機によるドル安へ
その結果、1995年頃から2001年頃まで、長期的なドル高が進みました。ドル高というと非常に聞こえはよく、実際問題としてドル高になって円が安くなれば、日本経済は非常に助かってきます。ところが、新興国は、米ドル高が進むことによって新興国通貨が売り込まれて、それが投資家の資本逃避を招いて、債券価格が下落し、さらなる通貨安を招くという悪循環に陥ってしまうことがあります。
実際問題として、90年代後半に長期的なドル高が進んだ時は、94年にまずメキシコ危機が起こりました。その後、97年にアジア通貨危機が起こり、それが98年のロシア危機、ブラジル危機、そして最終的には2001年のアルゼンチンのデフォルトにつながっていく動きが出ました。
ここでポイントなのは、98年のロシア危機です。この90年代も原油価格が比較的低迷していました。そこに97年のアジア通貨危機が起こって、世界経済が一段と減速する。それによって原油価格が一段と下がっていく。そしてロシア経済が苦しくなって、まずここで危機が起こってしまったということです。
このロシアの国債投資を行っていたヘッジファンドの一つに、LTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)という非常に大手のファンドがありました。このLTCMが経営難に陥り、ロシア危機が世界全体の危機に拡大していく...