中東最新事情を読む
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
スンナ派とシーア派の宗教戦争に発展する危険性は?
第2話へ進む
サウジアラビアとイランの国交断絶は戦争につながるのか
中東最新事情を読む(1)サウジ・イラン断交
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
中東の二大国家間に軋みが起こっている。2016年の年明け早々、サウジアラビア政府によるシーア派指導者ニムル氏の死刑執行を皮切りに、イランの首都テヘランでデモ隊がサウジアラビア大使館を襲撃、放火。これによりサウジ外相がイランとの断交を発表したのだ。風雲急を告げる中東の最新事情を、歴史学者・山内昌之氏に解説いただこう。(全7話中第1話目)
時間:9分53秒
収録日:2016年1月27日
追加日:2016年2月18日
カテゴリー:
≪全文≫

●シーア派指導者処刑からサウジ・イラン断交へ


 皆さん、こんにちは。私は、このお正月の1月6日から18日まで中東に出張してきました。偶然にも今、国際政治の焦点になっているイランを中心に、アラブ首長国連邦や中央アジアのトルクメニスタンに行ってきたのです。

 今年、2016年に入って中東で起こったことは、皆さまにとっても私にとっても、ひいては世界史の記憶の中にも残るかもしれない一連の事件でした。

 全ては1月2日に始まっています。サウジアラビア王国は、それまで国内において治安を乱し、政府や王室を転覆しようとしたという容疑で有罪にしていたシーア派の指導者、アヤトラ・ニムル・バクル・アル・ニムル(通称ニムル師)を、他の3人のシーア派教徒と一緒に処刑しました。王制と体制の転覆容疑のためであることは、すでに申した通りです。

 このため、シーア派の大国であるイランの一部国民が激高し、テヘランのサウジアラビア大使館や、北東部にあるマシュハドの領事館を襲撃し、焼き討ちするという事件が起きました。結果的に、サウジアラビア王国がイラン・イスラム共和国に対して国交の断絶を表明する事態に至ったことは、ご記憶にも新しいかと思います。


●サウジ・イランの断交は戦争につながるのか


 これに続いて、アラブ連盟の加盟国のうちバーレーンとスーダンもイランとの断交を表明。私が訪問したアラブ首長国連邦とカタールは、イランから大使を召還し、外交レベルを低くするという形で抗議の挙に出たわけです。

 これは正月早々、誠に慌ただしい動きでした。通常、国交断絶は、大使を任国から呼び返す(大使召還)手続きを経て実施されますが、今回は異例といっていい早さでした。普通の手順は、大使の召還を経て最後通牒、その後に戦争という流れになるのですが、サウジアラビアは一挙に国交断絶という挙に出たわけです。

 もっとも、サウジアラビアはイランと正面から戦争する意志を固めたわけではないようです。例えば、メッカとメディナという二つの聖地に対するシーア派教徒の巡礼は認めることを表明しているからです。

 また、イラン側も1月下旬以降、「パニックに陥らず、冷静になるように」とサウジアラビアに呼びかけ、「イランとの関係を回復することは、サウジアラビアの未来を明るくする材料だ」と、イランらしい言い方で関係修復を図るサイン...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
柿埜真吾

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男