中東最新事情を読む
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イランのしたたかな外交力こそ中東危機の最重要ファクター
中東最新事情を読む(6)伝統と革命が併存するイラン
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
歴史学者・山内昌之氏が、中東最大の危険因子イラン国内の相反する二大潮流を分析、解説する。これは、イランの歴史と伝統を敬う歴史家の目と、分裂症イランの現実を冷静に分析する社会科学者の目の双方を持つ山内氏にしか語れない中東最新事情である。(全7話中第6話)
時間:6分56秒
収録日:2016年2月2日
追加日:2016年3月7日
カテゴリー:
≪全文≫

●法の支配を徹底して無視するイラン急進派


 皆さん、こんにちは。

 イラン・イスラム共和国を考える際、ルーホッラー・ホメイニーの存在は絶対的なものがありますが、ホメイニー時代のアメリカ大使館人質事件からサウジアラビア大使館焼き討ちに至るまで共通しているのは、率直に申しまして、法の支配に対する無知か、あるいは、法の支配ということを知っていても無視するか、そのいずれかであるかと思われます。この人たちが仮に一部であるにしても、イランの国内において十二分な追及を受けずにこうした行為ができたということは、期せずして、私はウラジーミル・レーニンの『国家と革命』を思い出します。この書にある有名な表現に「革命はそれ自体の法を作る」という考えがありますが、それを実践しているのが、今回のようなイランの極端な潮流ではないかと思われます。しかも、イラン人の急進派は、レーニンや初代の外務大臣、外務人民委員を務めたレフ・トロツキーよりも徹底している節もあります。

 ソビエトロシアは、1918年のブレスト=リトフスク条約で、ドイツとの国交を正常化しました。その後、この革命政府が帝国新政府と結んだ条約を批判する人々は、これをとんでもないことだと批判しますが、これは口だけにとどまりませんでした。同じくボリシェヴィキと連立政府を組んでいた左翼SL(SL左派)という政党の党員が、ドイツ帝国大使であるミルバッハ伯爵を暗殺するという、思いがけない事件が起こりました。その時、レーニンは間髪を入れずドイツに謝罪したのみならず、左翼SLとの連立を解消し、その組織の解体に乗り出しました。

 イランの方にもっと似ているとすれば、ソビエトロシアよりもむしろ文化大革命期の中国ではないかと思います。外国から大使を召還し、正常な外交機能を停止させただけではなく、紅衛兵は外国の高官に乱暴、狼藉をはたらいてやまなかったことは、よく知られています。


●文明国家の伝統と革命の情念が併存するイラン


 イランでは、すこぶる成熟した文明国家の伝統が一方にあり、他方においてホメイニーがあおった革命の情念をくすぶるような革命の熾火というものがいまだに併存しているかのように思われます。2011年にテヘランのイギリス大使館がいわゆる暴徒によって襲撃され、書類が略奪されるという事件が起きました。当時のイランの外相アリー・アク...

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