中東最新事情を読む
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
イランのしたたかな外交力こそ中東危機の最重要ファクター
中東最新事情を読む(6)伝統と革命が併存するイラン
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
歴史学者・山内昌之氏が、中東最大の危険因子イラン国内の相反する二大潮流を分析、解説する。これは、イランの歴史と伝統を敬う歴史家の目と、分裂症イランの現実を冷静に分析する社会科学者の目の双方を持つ山内氏にしか語れない中東最新事情である。(全7話中第6話)
時間:6分56秒
収録日:2016年2月2日
追加日:2016年3月7日
カテゴリー:
≪全文≫

●法の支配を徹底して無視するイラン急進派


 皆さん、こんにちは。

 イラン・イスラム共和国を考える際、ルーホッラー・ホメイニーの存在は絶対的なものがありますが、ホメイニー時代のアメリカ大使館人質事件からサウジアラビア大使館焼き討ちに至るまで共通しているのは、率直に申しまして、法の支配に対する無知か、あるいは、法の支配ということを知っていても無視するか、そのいずれかであるかと思われます。この人たちが仮に一部であるにしても、イランの国内において十二分な追及を受けずにこうした行為ができたということは、期せずして、私はウラジーミル・レーニンの『国家と革命』を思い出します。この書にある有名な表現に「革命はそれ自体の法を作る」という考えがありますが、それを実践しているのが、今回のようなイランの極端な潮流ではないかと思われます。しかも、イラン人の急進派は、レーニンや初代の外務大臣、外務人民委員を務めたレフ・トロツキーよりも徹底している節もあります。

 ソビエトロシアは、1918年のブレスト=リトフスク条約で、ドイツとの国交を正常化しました。その後、この革命政府が帝国新政府と結んだ条約を批判する人々は、これをとんでもないことだと批判しますが、これは口だけにとどまりませんでした。同じくボリシェヴィキと連立政府を組んでいた左翼SL(SL左派)という政党の党員が、ドイツ帝国大使であるミルバッハ伯爵を暗殺するという、思いがけない事件が起こりました。その時、レーニンは間髪を入れずドイツに謝罪したのみならず、左翼SLとの連立を解消し、その組織の解体に乗り出しました。

 イランの方にもっと似ているとすれば、ソビエトロシアよりもむしろ文化大革命期の中国ではないかと思います。外国から大使を召還し、正常な外交機能を停止させただけではなく、紅衛兵は外国の高官に乱暴、狼藉をはたらいてやまなかったことは、よく知られています。


●文明国家の伝統と革命の情念が併存するイラン


 イランでは、すこぶる成熟した文明国家の伝統が一方にあり、他方においてホメイニーがあおった革命の情念をくすぶるような革命の熾火というものがいまだに併存しているかのように思われます。2011年にテヘランのイギリス大使館がいわゆる暴徒によって襲撃され、書類が略奪されるという事件が起きました。当時のイランの外相アリー・アク...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
ロボットの「カンブリア爆発」時代へ電動化がもたらすもの
岡本浩
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
2025年、どん底日本を脱却する大戦略(1)日本が凋落した要因を総覧する
日本凋落の「7つの要因」と「10の復活大戦略」
島田晴雄
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(1)「プラチナ社会」構想と2050年問題
5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現
小宮山宏
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司