中東最新事情を読む
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
レンティア国家としてのサウジアラビアの危機
中東最新事情を読む(4)レンティア国家サウジの変容
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
歴史学者で中東情勢に詳しい山内昌之氏が、サウジアラビアが抱える多くの問題点について解説する。石油の収入で潤ってきたサウジアラビアだが、現状は財政赤字をどう立て直すかが急務となっている。「世界一裕福な国」は、なぜここまで憂慮すべき事態に陥ったのか?(全7話中第4話)
時間:10分47秒
収録日:2016年1月27日
追加日:2016年2月29日
カテゴリー:
≪全文≫

●サウジの国教ワッハーブ派は厳格なスンナ派の流れ


 皆さん、こんにちは。

 サウジアラビアという国のイスラム解釈は、大変特異なものがあります。サウジアラビアでは、いわゆるワッハーブ派という流れが国の宗教、国教となっています。そもそもワッハーブ派を国教とするサウジアラビアは、もともと今のアラビア半島の真ん中のナジュド地方にあるリヤド(サウジアラビアの現首都)に近いディルイーヤをかつて首都とした豪族、ムハンマド・ビン・サウードと、法学者であるムハンマド・ビン・アブドゥル・ワッハーブ、これがワッハーブという名の由来ですが、このサウード家とワッハーブ家という二つの家が、政治と宗教面で18世紀に同盟を組んだことに由来します。

 ワッハーブ派は、18世紀のアラビア半島で、従来のスンナ派の法学解釈や、イスラム神秘主義、スーフィズムの慣行を全て否定し、7世紀のムハンマドとカリフの以降に表れた新奇な慣行を排斥しました。この新奇な慣行の全てをアラビア語でビドアと言い、直訳すると「イノベーション」という意味にも使われますが、このビドアとして排斥した点で、スンナ派の厳格化を求めた流れです。もちろん、スンナ派の厳格化を求め、全ての新しい現象をビドアとして排斥したわけですから、シーア派を認めるはずがありません。シーア派と対決する宿命にあるのが、このワッハーブ派であったと言えます。

 ワッハーブ派は、現在のイスラム武装闘争主義とも言うべきIS(イスラム国)や、シリアのヌスラ戦線、その前のエジプトやシリアのムスリム同胞団、こうした人たちが本格的に刺激を受けたイスラム原理主義の古典的な潮流であったのです。これは、サラフ(先人)への原点回帰や、伝統の純化を強調するサラフィーヤ、サラフィー主義から出たものであります。


●禁欲主義と享楽主義の二重基準がイランの批判の的に


 本来の復古的な禁欲主義は、現在のサウジアラビアの王族やエリートの世界的にもよく知られている海外における消費的な享楽主義や、対米同盟路線といった外交には少しも痕跡をとどめていません。しかし、このワッハーブ派のすこぶる復古的な禁欲主義は、部族や市民に対する厳格なイスラム法の適用、窃盗や姦通に対する罪というのは非常に厳しく、手を切り落とされる、あるいは、石打の刑を受けるといったような、イスラム法の厳格な適用に継承されて...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾
これからの社会・経済の構造変化(1)民主主義と意思決定スピード
フラット化…日本のヒエラルキーや無謬性の原則は遅すぎる
柳川範之
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博

人気の講義ランキングTOP10
AI時代と人間の再定義(4)自分と出会うチャンス
人生はエネルゲイア――AIにない「自分と出会うチャンス」
中島隆博
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
これからの社会・経済の構造変化(2)経済的利益と社会課題解決の両立へ
利益か社会課題解決か…かつての日本企業の美点を取り戻せ
柳川範之
衰退途上国ニッポン~その急所と勝機(1)安いニッポンと急性インフレ
世界で一人負け…「安い国」日本と急性インフレの現実
宮本弘曉
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(9)秀吉が作った公武統一政権と歴史のif
公武統一政権を作った秀吉の狙いとその歴史的意味
黒田基樹
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「進化」への誤解…本当は何か?(9)AI時代の人間と科学の関係
科学は嫌われる!? なぜ「物語」のほうが重要視されるのか
長谷川眞理子
平和の追求~哲学者たちの構想(7)いかに平和を実現するか
国際機関やEUは、あまり欲張らないほうがいいのでは?
川出良枝
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
島田晴雄