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サツマハオリムシ集落の全体像を明らかにするロボット!

「トライドッグ1号」の活躍~ハオリムシサイトの地図作成

浦環
東京大学名誉教授/株式会社ディープ・リッジ・テク代表取締役
概要・テキスト
サツマハオリムシ
「水産資源や漁業資源の海底での分布状況について、ロボットでマップを作れるようになった」と、九州工業大学社会ロボット具現化センター長・浦環氏は話す。その端緒となったのが、トライドッグ1号が2006年に作ったハオリムシサイトの地図である。浦氏がロボットの活躍ぶりを語る。
時間:10:04
収録日:2016/05/17
追加日:2016/10/19
≪全文≫

●トライドッグ1号、鹿児島湾に潜る


 続きまして、浦の三つ目のロボット「トライドッグ1号」が何をしてきたかをお話ししたいと思います。

 それは、鹿児島湾の調査です。トライドッグ1号は、2001年、2002年にはほとんど完成の域に達しており、調査テーマを探していました。当時はそれでもかなり本格的だったのですけれども、このロボットは100メートルくらいしか潜れません。なぜ100メートルかというと、琵琶湖が一番深いところで104メートルだからです。琵琶湖を調査することは関西地区の水資源の管理という意味で重要で、実はわれわれは2000年に「淡探(たんたん)」というロボットをつくり、滋賀県琵琶湖研究所(現:滋賀県琵琶湖環境科学研究センター)が運転していました。それと並行して、コンセプトは若干違うのですが、われわれはトライドッグ1号をつくったわけです。実際に琵琶湖も潜っています。

 2006年、トライドッグ号が鹿児島湾に潜る計画を立てました。鹿児島湾に「タギリ地帯」というところがあります。これは鹿児島の地図で、街はここです。桜島の北側のこの辺りに若尊(わかみこ)カルデラがあって、その近くが有名な菱刈鉱山です。世界で一番高い品位を持つ金鉱石が出ると言われています。そのすぐそばに、タギリ地帯があります。ですので、われわれは、山のように金があるのではないかというすけべ心を持ちながら行きました。タギリとは、下からあぶくが出てきて、まるでたぎっている、お湯が沸いているように見える場所のことです。実際に船で行くと、ぶくぶくと泡が出てきます。その近くにハオリムシサイトがあって、サツマハオリムシが棲んでいるのです。この辺りの海底地形図はこのようになっています。若尊カルデラは深さが200メートルほどで、その東に水深100メートルくらいの山があります。その山頂から温泉が出ていて、近くにサツマハオリムシという変わった生物がいるのです。


●サツマハオリムシ集落の全体像が見えてきた


 これはトライドッグ1号が2006年に撮影してきた「サツマハオリムシ」です。ゴカイの仲間で、英語では「チューブワーム」と呼ばれる生き物です。硫黄細菌というバクテリアを自分の中に共生させて、その細菌が行う化学合成でエネルギーを確保しています。チューブワームは海底の熱水地帯に特有の生物で、アメリカのグループがガラパゴス諸島沖合の熱水地帯で最初に発...
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