「ツナサンド」の日本近海調査
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
直江津沖のメタンハイドレート調査でカニの世界を見る!
「ツナサンド」の日本近海調査(1)日本海沖の海底資源
浦環(東京大学名誉教授/株式会社ディープ・リッジ・テク代表取締役)
深海1,000メートルの海の底に、宝の山が眠っている?! 日本海のメタンハイドレートから北海道沖のズワイガニまで。これまで知り得なかった日本近海の海底資源を、ロボットが明らかにした。九州工業大学社会ロボット具現化センター長・浦環氏が語る、ロボット探査の画期的な成果と活用の可能性。(全2話中第1話)
時間:11分00秒
収録日:2016年5月17日
追加日:2016年10月26日
≪全文≫

●深海の海底を連続撮影できるツナサンド


 続いてツナサンド(Tuna-Sand)の活躍についてご紹介します。ツナサンドは2007年に完成していますが、トライドッグ1号の後継機です。ツナサンドが行った仕事として非常にエポックメイキングなのは、2010年に日本海のメタンハイドレート地帯に潜航して、海底の様子とベニズワイガニの生態を調べたことです。

 トライドッグ1号は琵琶湖を考えていたので深さ100メートルそこそこしか潜れません。しかし、それではやはり面白味がないので1,500メートル潜れるロボットを同じようなコンセプトでつくろうと考えました。それによって、先ほどのサツマハオリムシ地帯のモザイクのような写真が、他の深い場所でも撮影できる。特に熱水地帯でできれば、いろいろな新しいことが分かるのではないか、というわけです。

 これがツナサンドです。トライドッグ1号と見た目は全然違いますが、耐圧容器が三つあり、電池用が2本、メインが1本。メインにカメラがあり、下にもカメラが付いていて、それで海底を観測する。そういうコンセプトです。カメラは前方に、耐圧容器に入った観測用のスチール・カメラがあります。そのライティング用ストロボがここにあります。スチール・カメラは市販のカメラで、高価なものではありません。それを圧力容器の中に入れます。ストロボも自作で、市販のストロボを容器に入れます。それから、海底の細かい地形を調べるためにプロファイリング・ソナーというソナーを付けています。この三つの道具を使って海底を観測しようとするわけです。実際はかなり海底に接近するので、でこぼこにぶつかってしまってはいけないので、レーザーを使った新しい衝突防止用システムも搭載しています。


●日本海の直江津沖でメタンハイドレートを調査


 出かけていくところはここ(日本海・直江津沖)です。なぜここに行くことにしたかというと、実はこの辺りは表層型メタンハイドレートがあります。これは当時東大理学部の松本良先生が研究されていたのですが、この辺りはメタンハイドレートが海底にそのまま見えるように出ているのです。そのメタンハイドレートがどこにどう見えているかの分布を調べるのが第一の目的です。それから、どこからあぶくが出ているのか、メタンが湧いているのかを調べようと考えて出かけていきました。それが当初の目的でした。しかしながら、後にわれ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
培養肉研究の現在地と未来図(1)フェイクミート市場とリアルミート研究
食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る
竹内昌治
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹
知能と進化(1)知性と身体性
AI、ディープラーニングとは…知能と身体性は不可分か?
長谷川眞理子

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(5)「チーム戦と新規ビジネス」の要点
「土地勘のあるところ、自分たちの武器を持っていく」
水野道訓
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子