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「リモデリング」機能を備えた骨の役割は3つ!

老いない骨のつくり方(2)骨の役割と構造

鄭雄一
東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻教授
情報・テキスト
東京大学工学系研究科・医学系研究科教授の鄭雄一氏による「老いない骨のつくり方」シリーズ講話第2弾。今回は、骨の役割や構造について学ぶ。われわれの体の中には、どんな人工材料も及ばない「骨、軟骨」というすばらしい材料が備わっているのだ。(全5話中第2話)
時間:11:48
収録日:2016/09/14
追加日:2016/10/27
≪全文≫

●骨の役割と仕事-1.物理的支持


 次に骨の役割と構造についてお話しいたします。骨の病気について知るためには、やはり役割と構造をしっかりと知っていく必要がございます。

 骨の仕事と仕組みには大きく分けて3つございます。1番目は物理的な支持です。これは非常に分かりやすく、まずは形の維持です。つまり顔や形は骨で大体決まるということです。次に、筋肉のてこですが、われわれが地上で立てるのは筋肉だけでは無理で、骨があるから立てるのです。そして臓器の保護で、頭や胸、お腹のあたりの臓器を保護します。

 形の維持は先ほど言いましたように、特に容貌を決めています。顔の骨について、われわれは、非常に敏感に形を感じとっています。例えば、数ミリずれたりするだけで、印象ががらりと変わります。それから筋肉のてこについてですが、先ほど言いましたように、地上で効率よく動けるのは骨のおかげです。どんなに筋肉がたくさんあっても、例えば、タコなどは地上ではまったく動けません。それは骨がないからです。

 臓器の保護ですが、これは頭蓋骨がもしなかったら、野球するのも命懸けということになってしまいます。その他、胸の中やお腹の中の臓器も同様です。

 こちらの絵は、容貌が骨で決まっていることをよく示す例ですが、左側はあごの骨が正常な人です。もしこれが、歯槽膿漏などで歯が抜けてしまうとどうなるかというと、右側のような顔になるのです。歯が抜けると、それを支える骨も溶けてしまいますので、口の周りに深いしわができます。他の部分は同じですが、やはりぱっと見て、右の方が老人だなという顔貌になってしまいます。


●骨の役割と仕事-2.血液をつくる


 2番目の役割は、血液をつくるということです。よく「とんこつ」などと言いますが、あれは骨の髄(骨髄)です。骨の中には骨髄が入っていて、血液の元となる細胞のすみかとなっています。われわれの赤血球、白血球、血小板、全ての血液の細胞は骨髄でできています。魚や両生類はこういった仕組みではなく、別の場所で血液をつくっているのですが、地上に上がってきた爬虫類ぐらいから、骨髄は発達したと言われています。


●骨の役割と仕事-3.血中カルシウム濃度の維持


 そして3番目です。これは知らない方が多いと思うのですが、骨は血中カルシウム濃度を一定に保っています。血中のカルシウム濃度は厳密にコントロールされているのです。下がってしまったときは骨を溶かし、多すぎるときは骨に貯蔵するなどしてコントロールしています。血中カルシウム濃度は、生命維持にとても重要なのです。実は体が感じている順番としては、血中カルシウム濃度のコントロールが一番です。つまり、カルシウム濃度の維持が一番大事だと体は感じているのです。これは、骨の健康よりも優先されます。

 最後に、「骨の健康のためにはカルシウムをたくさんと摂ってください」というお話をいたします。なぜそうかというと、血中のカルシウム濃度が下がってしまうと、体は骨がスカスカだろうが何だろうが、骨を溶かしてしまうからです。それほど血中カルシウム濃度の維持が一番大事ということで、物理的な支持が駄目になっても、気にかけません、だから、絶対にカルシウムはきちんと取らなければいけないということです。カルシウムも取らずに運動しても、何の意味もありません。


●骨の成り立ちと成分それぞれの役割


 では、骨はどのような成り立ちになっているかということを、ここで示します。骨はほかの臓器とは違う、とても面白い構造をしています。普通、われわれの体は、70パーセントが水です。ところが骨は70パーセントが無機成分で、その90パーセントほどがリン酸カルシウムといわれるセラミックスの一種でできています。そして約20パーセントが有機成分で、そのほとんどがコラーゲンです。残りのわずか10パーセントほどが水分で、そこが他の臓器と大きく違うということです。他の臓器は、水分が70パーセントで、有機成分が20パーセントというのは同じですけれど、無機成分はほとんどありません。しかし、骨はほとんどが無機成分でできているのです。

 では、それぞれの役割は何かということですけれども、骨はよく「鉄筋コンクリートに似ていますよ」と言われます。無機成分はセメントに相当します。これは硬いがもろい組織です。有機成分は鉄筋に相当します。しなやかだが、柔らかいのです。どちらも単独では、骨として不適当です。無機成分だけですと、少しジャンプしただけで、ボキっとチョークのように骨は折れてしまいます。有機成分は柔らかいので、地上に上がったらグニャッとなってしまいます。でも、体は長い進化の歴史からこれらを組み合わせて、硬くてしかもしなやかな骨を実現しているのです。ですから、骨は鉄筋コンクリートに似てい...
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