●人生のフェアウェイを進む稀勢の里の横綱昇進
皆さん、こんにちは。ご案内のように日本相撲協会は、2017年1月25日の両国技館で開かれました春場所の番付編成会議と臨時理事会において、初場所優勝を飾った稀勢の里を横綱に昇進させることを正式に決定しました。私個人としても大変深い感慨があります。と申しますのも、私は横綱審議委員会(以下、横審)の一員として、稀勢の里の横綱昇進に関わる議題について、幾度となく関わってきたからです。
ちょうど1月23日月曜日の横審において、八角理事長の諮問に答えまして、委員全員が一致して稀勢の里の横綱昇進を是とする(賛成する)ということになりました。誠にめでたいことであり、感慨深いことでした。
また、内輪のことになりますが、横審の委員長であった守屋秀繁先生はもともと千葉大学医学部の整形外科学教授でいらした方ですが、大の好角家、相撲ファンでもあります。ちょうどその守屋先生が任期を終えてこの場所を最後に退任されるというその日に、今回の横審があり、そして稀勢の里の横綱昇進が決定したということは、私たち個人にとっても大変喜ばしいことでした。
いろいろな意味で男の花道、あるいはゴルフでいうところのフェアウェイという言葉がありますが、人生のフェアウェイというものをいろいろな形で究めていく、あるいはそこを進むことができるということを、私は歴史学者として、さまざまな人たちの生きざまを見つめてきた者として、今回の横綱昇進を重たく、かつ嬉しく受け止めた次第です。
●白鵬、稀勢の里の相撲史上に残る横綱相撲
稀勢の里の人となりについては、いろいろ語られていますが、私はちょうど千秋楽に東の土俵下の溜り(審判員・力士・行司などが控える場所)で勝負を見ていました。
東方は白鵬関であり、白鵬のまさに怒濤のような寄りと言った方がよろしかったかと思います。立ち合い直後に白鵬が張り差しをしようとしたのですが、その張りをする前に稀勢の里の左が即座に入り、左をつかまえました。その左でつかまえていたにもかかわらず、白鵬はすごいスピードであっという間に西側の徳俵の方に向かって寄り切っていく体勢を整えたのです。そこで、普段の白鵬よりもやや力が拡散したような感じを受けましたが、しかし、一目見ただけで(at a glance)非常に早い出足で圧倒し、稀勢の里を土俵際に追い詰めたた...