法人税改革の三つの論点
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
黒字申告割合が3割―日本の納税企業率の驚異的な低さ
法人税改革の三つの論点
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
日本企業の黒字申告割合は3割に満たない。国の歳出増大が続く中、法人税増収のための活路はどこにあるのか。国と企業、政治と経済の間に横たわる「法人税改革」に必要な三つの論点を曽根泰教氏が見抜く。
時間:6分33秒
収録日:2014年5月28日
追加日:2014年8月1日
カテゴリー:
≪全文≫

●実効税率引き下げだけを議論することの無意味


 今回は、法人税改革についてお話しいたします。

 法人税に関して現在議論があるのは、日本の実効税率が高いということ、これを諸外国並みに引き下げるべきだということ、この点が議論されています。しかしこの法人税改革については、実は大きく三つの論点が必要だと思っています。

 一つ目は、企業の海外移転、国際化との関係です。法人税によって企業は海外移転をしてしまうのかどうか、具体的な証拠があるのかというと、証拠を発見することはなかなか難しいものがあります。

 確かに、法人税を明確な理由として海外へ移転するケースも時々はありますが、実際に散見されるのはむしろ法人税を納める形として海外の連結子会社を使うとか、あるいは海外支店を使うといった方法であって、移転そのものの理由が法人税にあるかどうかは分からないわけです。米・アップル社がアイルランドを実質的にタックスヘイブン(租税回避地)として利用して、いわゆる「課税逃れ」をしていたという有名な話がありますが、現実には日本でも、商社や黒字を出している企業が海外で納税しているケース、あるいは所得を分散して、課税逃れというよりも節税をしているケースなど、いろいろあるのだろうと思います。ですから、国際化と課税の問題はなかなか議論が難しく、また実態を調べるのも厄介な問題と言えます。

●日本の企業はみんな非営利? 3割を切る黒字申告割合


 二つ目は、納税企業率との関係です。原則として、黒字企業でなければ、つまり黒字申告でなければ、法人税はありません。ところが、今の日本で法人税を納税している企業がどのくらいあるかというと、約25パーセントにすぎません(平成22年度)。昨年、今年と少し景気が回復しましたので、27パーセントを超えているのではないかと思いますが、いずれにしても日本の大半の企業は黒字申告をしていない、つまり赤字なわけです。「日本の企業はみんなNPO(Non Profit Organization=非営利団体)」というジョークにされるほどです。

 政治・政策の観点から言えば、企業は儲けてください、利益を上げてください、利益を上げて国に法人税を納税してくださいというのが率直な思いです。企業は社会貢献をするべきだと言いますが、企業の社会貢献の第一歩は、まず利益を上げて企業らしく法...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
トランプの誤謬…米国製造業を壊した犯人は米国の経営者
島田晴雄
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾
インフレの行方…歴史から将来を予測する(1)インフレの具体像を探る
270年の物価の歴史に学べ…急激な物価上昇期の特徴と教訓
養田功一郎
お金とは何か?…金本位制とビットコイン(1)お金の機能とその要件
お金の「3大機能」とは何か? そしてお金のルーツとは?
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(1)最新研究から見えてくる未来像
AI大格差…なぜ日本の雇用環境では「ショックが大きい」のか?
宮本弘曉
イラン戦争と終末論(1)イラン戦争の戦略的背景と米国の政策
なぜイラン戦争がこのタイミングなのか?戦略的背景に迫る
東秀敏
編集部ラジオ2026(14)小宮山宏先生:知識の構造化のために
【10min名作探訪】テンミニッツ・アカデミーの意義と発想法
テンミニッツ・アカデミー編集部
ロシアのハイブリッド戦争と旧ソ連諸国(1)ロシアの勢力圏構想とNATO拡大
「ハイブリッド戦争」の実像…ロシアが考えていることとは何か?
廣瀬陽子
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
インフレの行方…歴史から将来を予測する(1)インフレの具体像を探る
270年の物価の歴史に学べ…急激な物価上昇期の特徴と教訓
養田功一郎
本質から考えるコンプライアンスと内部統制(1)「法令遵守」でリスクは管理できない
「コンプライアンス=法令遵守」ではない…実例が示す本質
國廣正
「逆・タイムマシン経営論」で見抜く思考の罠(3)飛び道具トラップと「文脈剥離」
IT業界で次々に発動される飛び道具トラップのメカニズム
楠木建
知識の構造化のために(1)テンミニッツTVの問題意識
「知識の爆発」の時代、不可欠なのは世界の全体像の把握
小宮山宏