●第3次ガザ戦争は多くの死者を出しながら続いている
イスラエル軍によるガザへの大規模攻撃は、2008年の第1回、2012年の第2回に続くものであります。今回の第3次ガザ戦争とも言うべきハマスとイスラエルとの争いは、ちょうど日本の終戦記念日にあたる8月15日の時点で、パレスチナ人の側に約2000人の死者を出し、イスラエル人の死者も約70人を数えています。
私たちからするならば、この犠牲者のあまりの非対称、バランスを欠いた数字の差に驚く人たちは多いかと思われます。この理由の一端は、イスラエル国家の軍隊が世界でも最先端の装備を持ち、そして、豊富な実戦経験を重ねてきた軍隊であるということにあります。他方、ハマスは、非国家主体とも言うべき武装集団から成っている組織でありまして、こうしたハマスとイスラエルという二つの組織の間にある、軍事的な優劣の差が出ていると言ってよろしいかと思います。
もちろん、イスラエル軍がハマスの陣地や砲台を攻撃すれば、もともと非常に狭く窮屈なガザ地域に押し込められている住民たちがこの戦争に巻き込まれるのは、まことに理の当然と言わなければなりません。
●イスラエルとパレスチナとの争いに新しい三つの変化
しかしながら、イスラエルは、今回まだ続いているこの第3次ガザ戦争によって、このガザと接する自らの南部国境の恒久的な安全保障を確立することが、果たしてできるのでしょうか。私には、それが成功するとは到底思えません。なぜならば、今回の戦争にも象徴されますように、本質的にイスラエルとパレスチナとの争いの中に新しい変化が生じているからです。
イスラエルとパレスチナの存在を規定してきた大きな要因として、三つ挙げたいと思います。そして、その三つの要因に大きな変化が生じているのです。
その第一は、安全保障を担保する軍事的な要因であります。第二は、自らの国家的な存在に関する国際的な正当性(レジティマシー)をめぐる外交的な要因であります。第三は、国民国家のアイデンティティをめぐる歴史的な要因に他なりません。
●ハマスが軍事的劣勢を挽回しても、パレスチナとイスラエルは変わらない
イスラエルは、隣接するレバノンやヨルダンも含めまして、シリアやエジプトといったアラブの国々を相手に4回の中東戦争を行ってきました。第2回などは、その一部の国で...