ガザの悲劇、その反復の理由―新しい三つの変化
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ISの戦闘と第3次ガザ戦争では歴史的な意味合いが違う
ガザの悲劇、その反復の理由―新しい三つの変化
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
ハマスとイスラエルによる第3次ガザ戦争が続いている。しかし、この戦争がイスラエル南部国境の恒久的な安全保障の確立に成功するとは思えないと語る山内昌之氏。それは、イスラエルとパレスチナとの争いに新しい三つの変化が生じているからだ。果たして新しい三つの変化とは? そこに、ガザの悲劇が潜んでいる。
時間:19分34秒
収録日:2014年8月20日
追加日:2014年9月12日
カテゴリー:
≪全文≫

●第3次ガザ戦争は多くの死者を出しながら続いている


 イスラエル軍によるガザへの大規模攻撃は、2008年の第1回、2012年の第2回に続くものであります。今回の第3次ガザ戦争とも言うべきハマスとイスラエルとの争いは、ちょうど日本の終戦記念日にあたる8月15日の時点で、パレスチナ人の側に約2000人の死者を出し、イスラエル人の死者も約70人を数えています。

 私たちからするならば、この犠牲者のあまりの非対称、バランスを欠いた数字の差に驚く人たちは多いかと思われます。この理由の一端は、イスラエル国家の軍隊が世界でも最先端の装備を持ち、そして、豊富な実戦経験を重ねてきた軍隊であるということにあります。他方、ハマスは、非国家主体とも言うべき武装集団から成っている組織でありまして、こうしたハマスとイスラエルという二つの組織の間にある、軍事的な優劣の差が出ていると言ってよろしいかと思います。

 もちろん、イスラエル軍がハマスの陣地や砲台を攻撃すれば、もともと非常に狭く窮屈なガザ地域に押し込められている住民たちがこの戦争に巻き込まれるのは、まことに理の当然と言わなければなりません。


●イスラエルとパレスチナとの争いに新しい三つの変化


 しかしながら、イスラエルは、今回まだ続いているこの第3次ガザ戦争によって、このガザと接する自らの南部国境の恒久的な安全保障を確立することが、果たしてできるのでしょうか。私には、それが成功するとは到底思えません。なぜならば、今回の戦争にも象徴されますように、本質的にイスラエルとパレスチナとの争いの中に新しい変化が生じているからです。

 イスラエルとパレスチナの存在を規定してきた大きな要因として、三つ挙げたいと思います。そして、その三つの要因に大きな変化が生じているのです。

 その第一は、安全保障を担保する軍事的な要因であります。第二は、自らの国家的な存在に関する国際的な正当性(レジティマシー)をめぐる外交的な要因であります。第三は、国民国家のアイデンティティをめぐる歴史的な要因に他なりません。


●ハマスが軍事的劣勢を挽回しても、パレスチナとイスラエルは変わらない


 イスラエルは、隣接するレバノンやヨルダンも含めまして、シリアやエジプトといったアラブの国々を相手に4回の中東戦争を行ってきました。第2回などは、その一部の国で...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
戦略的資本主義と日本~アメリカの復活に学ぶ5つの提言
戦略的資本主義とは?日本再生へアメリカに学ぶ5つの提言
片瀬裕文
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
「次世代地熱発電」の可能性~地熱革命が拓く未来
地熱革命が世界を変える――次世代地熱の可能性に迫る
片瀬裕文
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
こどもと学ぶ戦争と平和(1)私たちに必要な想像力と戦争体験
なぜ戦争が起こるのだろう…大切なのは想像力と生の声
小原雅博

人気の講義ランキングTOP10
こどもと学ぶ戦争と平和(1)私たちに必要な想像力と戦争体験
なぜ戦争が起こるのだろう…大切なのは想像力と生の声
小原雅博
哲学から考える日本の課題~正しさとは何か(1)言葉の正しさとは
「正しい言葉とは何か」とは、古来議論されているテーマ
中島隆博
ソニー流「人的資本経営と新規事業」成功論(1)人を真に活かす人事評価とは
ソニー流の「人材論」「新規ビジネス論」を具体的に語ろう
水野道訓
AI時代と人間の再定義(7)AIと倫理の問題と法整備の可能性
人間のほうがAIに寄ってしまう?…関係性と倫理のあり方
中島隆博
平和の追求~哲学者たちの構想(7)いかに平和を実現するか
国際機関やEUは、あまり欲張らないほうがいいのでは?
川出良枝
編集部ラジオ2026(2)「時代の大転換期の選挙」特集を解説!
「大転換期の選挙」の前に見ておきたい名講義を一挙紹介
テンミニッツ・アカデミー編集部
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(9)秀吉が作った公武統一政権と歴史のif
公武統一政権を作った秀吉の狙いとその歴史的意味
黒田基樹
デモクラシーの基盤とは何か(3)政治と経済を架橋するもの
「哲学・歴史」と「実証研究」の両立で広い視野をつかむ
齋藤純一
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(5)共存・共生のための理性
共生への道…ジョン・ロールズが説く「合理性と道理性」
齋藤純一
これからの社会・経済の構造変化(4)日本企業の課題と組織改革の壁
日本の場合、トップダウンよりボトムアップで変えるべき?
柳川範之