●二つの反省を活かし、スタートラインがうまくいった安倍政権
安倍政権が内閣改造をしましたが、内閣改造とは何なのかというお話をします。
そもそも安倍政権が出来上がったときには、二つの反省から出発しました。一つは、第一次安倍内閣が約1年という非常に短命に終わったことです。もう一つは、民主党政権が失敗したということです。その二つの反省に、いくつかの要因が重なるわけですが、例えば、経済政策一つとっても、第一次安倍内閣のときの金融政策や経済政策は、やはり付け焼刃的なかなり薄っぺらいものだったのです。
ところが、今回の安倍内閣では、政権交代前にアベノミクスを打ち出します。これも、第一の矢、第二の矢、第三の矢とそれぞれ評価はありますが、特に金融から入り、株価を上げ、スタートラインがうまくいきました。これによって、支持率は落ちても半分を少し割るくらいに止めています。そういう点で、安倍内閣は、第一次安倍内閣とは大きく違います。
もう一つ、大きく違うのは、衆参がねじれていないということです。ということは、当たり前のことですが、法案は基本的には通りますので、その意味で国会運営はやりやすいのです。
安倍内閣が、これだけ持続して支持率が高い理由は何なのかと、よく聞かれるのですが、一つは、以前に比べて随分周到だと思います。その理由の一つは、例えばスキャンダルや失言で辞めた大臣がいないからです。つまり、2年弱の任務をまっとうできたということが、この内閣の特徴です。少なくとも国民の期待値は、「1年くらいで交代してしまう政権はもうこりごりよ」というものですから、それに対しては、持続するというだけでも安倍内閣の価値はあると思います。もちろん、問題は中身ですが、中身に関しては異論もあるし、さまざまな解釈も可能でしょう。
●官邸からのコントロールが相当利いている政権
さて、内閣改造に関連して、自民党が長期政権であったときの内閣改造のイメージで今でも語る人がいます。安倍政権はすでに違う段階に差しかかっていると思いますが、例えば、「幹事長をやっていれば総裁選に出てもいい」とか、「内閣に入ると総裁選に出るのは難しい」という意見です。しかし、それは自民党長期政権時代の話なのです。つまり、どちらも難しいのです。例えば、選挙に敗れれば、首相だけではなく幹事長も責任をとらなければいけないのです。「それで次の総裁選や総選挙を目指すことができるのですか?」と問われれば、やはり難しい。ですから、内閣に入っているから、それができないということではないのです。
自民党長期政権時代の内閣改造は、定期異動的な意味合いもありました。つまり、政権はすでに自民党で、大量の大臣待機組がいて、短期間で入れ替えないと列が長くなってしまう。そういうときに派閥の推薦で選び、残り一人、二人を総裁枠に充てる。これは、自民党が長期の政権で、自民党内で政権が代わり、自民党の中でリシャッフルする時代の話なのです。
ですから、小泉さんのときから、「派閥の推薦は関係ない」「基本的に派閥から意向は聞くけれども、それで派閥に人数割するということはしない」ということにもなりましたし、かつては一番極端な例では、ドント方式で割って配分するという洗練された形ができてしまったのです。しかし、それは洗練ではなく、官僚主義の極みのような部分です。それで、本来的な、政権を担う大臣は首相が任命するということ、ここがはっきりしたのです。
そういう意味でいうと、安倍さんの手法はオーソドックスで、本来あるべき手法の中での範囲だと思います。基本は内閣官房、官房長官や副長官は存続させ、継続し、特に官房長官は継続するが、幹事長は代えるということを、かなり早い段階から考えていたのではないでしょうか。それはある意味で、「菅さんと石破さんとは違う」ということが言えるかもしれませんが、というよりも、この政権は基本的には、安倍・菅で動かしているということでしょう。幹事長は確かに党の方をやってもらうけれど、官邸側から、つまり官房から相当コントロールが利いているという政権なのです。
●今回の内閣改造の目玉は幹事長人事
では、幹事長は誰でもよく、「お飾りで結構」ということなのか。そういう意味では、小渕さんを最後の段階までかなり考えていた節はありますし、谷垣さんの起用は、最後の最後の段階だったと思うのです。事前にもう決まっていて、お芝居で小渕さんという説もありますが、そうではなく、小渕さんも考えていたと思います。
ただ、これは、谷垣さんにしたことによって評価が違ってきます。誰の評価が違うのかといえば、プロの評価が違ってきます。プロの評価は、やはり新聞やテレビの評論で結構影響があります。つまり、コメントする人が「お飾...