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旧来型の選挙で自民党が勝利! 民主党に風は吹かなかった

2014年総選挙の結果を総括する(1)現政権現状維持も波乱含み

曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
情報・テキスト
今後の政権は「多くの波乱を含んだ現状維持だ」と曽根泰教氏は予測する。それはなぜか。そして、今回の選挙はどのような意味があったのか。曽根氏が選挙を総括し、今後の政権を占う。(全3話中第1話目)
時間:09:24
収録日:2014/12/15
追加日:2014/12/15
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≪全文≫

●民主党が政権の受け皿になれなかった選挙


 まず、今回の総選挙の結果を総括し、その後でこれからの政治状況はどうなるかというお話をします。最初に、二つの新聞をご覧下さい。これは同じ日の新聞ではありません。こちらが2年前の朝日新聞で、これが今回の選挙の結果を踏まえた朝日新聞です。しかし、紙面の作り方はほとんど同じです。では、今回の選挙は一体何だったのでしょうか。

 前回の選挙では、自公で320議席を超えて、衆議院の3分の2を握り、安倍政権が誕生しました。その時の争点もアベノミクスでした。また、その前の総選挙で大勝した民主党が壊滅的な敗北を喫し、57議席まで落ち込みました。今回は若干回復しましたが、基本的に自公との差はそれほど変わっていません。

 民主党に加えて、共産党、公明党も若干増えましたが、大勝というほどの増え方ではありません。それから、みんなの党はなくなり、次世代の党、生活の党は議席を減らしました。維新の党はもっと減るだろうと言われていましたが、減少幅は少なかったと言えます。

 つまり、選挙前と選挙後で、ほとんど状況は変わっていないのです。そういう意味では、別途説明が必要ですが、政権批判の受け皿として、野党、特に野党第一党の民主党が政権の受け皿にならなかったことの意味が大きい選挙だったと思います。


●今回、自民党は旧来型の選挙で勝つことができた


 実は、投票日前まで、多くのマスコミや選挙の専門家、政治家たちは、今回の選挙は自民党の300議席を巡る攻防ではないかと考えていました。自民党単独で3分の2を占める、あるいは300議席を超えるといった予測が出ている一方で、自民党が300議席を割ると、安倍晋三首相に対して自民党内から異論を挟む人も出てくるのではないかと言われていたのです。これが「300議席を巡る自民党内の攻防」の意味です。しかし、総選挙の前後で議席数はそれほど変わりませんでした。さらに内閣も改造しないと言っています。それでは、この選挙の前後で何が変わったのだろうかという疑問が出てきます。

 自民党が勝ち過ぎていた場合、何が起きたかといえば、自民党内の勘違い、つまり、自分たちは完全に勝利したという勘違いが始まったのではないでしょうか。それが進むとおごりになります。おごりや勘違いが党内で起きるかどうか。これは今後も見ておかなければならない点です。

 それから、この小選挙区と比例代表が組み合わさった選挙制度は、風で動くと言われてきました。実際、2005年、2009年、2012年と大幅に議席が動いたわけです。しかし、今回は風が吹かなかったため、小選挙区の再選確率が高く、挑戦者がなかなか勝利できない選挙でした。特に小選挙区は、風が吹かない場合、候補者が地元をどれだけ回っているか、どれだけ地元の代弁者たり得るかが大きく影響します。その点、自民党は旧来型の選挙で勝つことができたと言えます。


●アベノミクスが今後直面する壁は高いだろう


 今回の選挙について、多くの有権者は「安倍政権でまあいいか」という程度の支持だったのだろうと思いますが、それでは政策的にアベノミクスは支持されたのでしょうか。

 安倍首相から見れば、今回の選挙結果は、このままの政策を続けてよいと解釈できると思います。ただし、難しいのは、消費増税を先送りしている点です。アベノミクスがうまくいっているのなら、先送りの必要はありません。ですが、自民党は選挙で「アベノミクスはうまくいっている」と言いながら、「消費増税は先送りする」という矛盾した説明に終始しました。そのため仕方なく「道半ば」という言葉を使い、「この道しかない」が、「道半ばだ」と言ってきたのです。

 アベノミクスが今後直面する壁は、実はかなり高いでしょう。量的緩和で日銀に積み上がった債務の出口をどう探るかという出口戦略と財政再建という二つの長期的な問題を背負い込んでしまっているのです。安倍政権の間にこの問題に対処するどうかは分かりません。ただ、消費増税も先送りしてしまっていますし、日本に長期のつけがたまってきていると思います。


●多くの波乱を含んだ現状維持だと予測できる


 もう一つ、安倍首相が前から言っている集団的自衛権や憲法改正に今後手を付けるかどうかが気になります。つまり、来年2015年、統一地方選挙を行った後に、後半の通常国会で集団的自衛権容認の法制化を行い、さらに憲法を改正し、あるいは外交でもっと保守的なポジションを取るのかどうかということです。現在、安倍首相は、女性活用、地方創生雇用改革といったリベラルな政策を強調していますが、それと並行して、国民は集団的自衛権や憲法改正に関するマッチョな政策を矛盾なく受け入れられるのでしょうか。

 また、ここで言う地方とは政策...
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