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新聞大手5紙の過去10年分の社説を調べて分かったこと

野党再編(2)対立軸と選択

曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授
情報・テキスト
野党再編について考える第2回。今回のテーマは「対立軸」。対立軸がはっきりすれば、国民は選択できるという考え方があるが、果たしてそうなのか。また野党再編において野党に求められるものは何か。対立軸を手すりに考えていきたい。(後編)
時間:11:16
収録日:2014/07/14
追加日:2014/09/04
カテゴリー:
≪全文≫

●対立軸はイデオロギー軸


曽根 再編について考えるとき、「見果てぬ夢」や「ないものねだり」の他にもう一つ、対立軸論争というものがあったわけです。対立軸がはっきりすれば、国民は選択できるという説です。

 その対立軸というのは何かというと、イデオロギー軸です。つまり、資本主義社会主義、自由主義陣営と社会主義陣営、保守と革新などです。しかし、きれいにスパッと分かれた二つの軸になるのかというと、「ならないのではないか」と言う人もいます。「自民党の中もごちゃごちゃしている」とか、「民主党の中もごちゃごちゃしている」とか。「リベラルはどちらなのか」とか、「民主党でリベラルを名乗るのは絶対許さん」というグループだっているわけで、「むしろ宏池会に近い」とか、「では、民主党が宏池会を名乗って票をとれるのですか?」と、こういった問題もあります。そんなことを言うと「選択できない」というわけです。「きれいに保守と革新に分けてくれないと選択できません」と。しかし、「そうなのですか?」と、聞きたくなるわけです。


●今、二つの言論のグループに分かれている


かつて日本の新聞は、どれを読んでも同じと言われていました。けれども今、日本の新聞は、朝日・毎日と、読売・産経で明らかに分かれています。原発も、集団的自衛権も、ときにはTPPも、明らかに分かれています。東京新聞は原発ではもっとこちら(左寄り)です。日経は、あるときは読売型、あるときには少しそちらに距離を置きます。

けれども、明らかに二つの言論のグループに分かれています。これは、テレビも似たところがあります。こんなにはっきりとした対立軸があるという時代は、少なくとも言論、あるいはマスコミでは、これまでにありませんでした。

 そこで、一つはそれに乗って、選挙で勝てれば実は簡単です。もし、国民が朝日・毎日、読売・産経というように二つに分かれて、この下に何千万、例えば2000万の固まりがあるのなら、政党はそれに乗ればいいだけです。

 ところが、マスコミのその主張と、それを支える国民の層は一致していません。国民はもっと流動的なのです。あるときには、原発に賛成したり反対したり、あるときには、集団的自衛権に賛成したり反対したり。

 ただ、これはマスコミが独自に動いているのかというと、そうではないようです。うちの学生が修士論文で朝日、毎日、読売、日経、産経の5紙の社説を10年分(1995~2004)調べたことがある。ちょうど、読売新聞の今の論説委員長の人が昔政治部長のときの過去10年分の社説を全部調べたのです。

 イデオロギーポジションを出して、二次元空間に位置づけました。そうしたら、面白いことに、読売が産経に近づくときがあるのです。「これは意図的に産経つぶしにかかった」と、私は思ったのですが、それをその読売新聞の人に言ったら、「いや、そんなことはありません」と言いました。「意図的に何かやったということではなく、読者、国民の主張にわれわれは合わせているだけです」と言うのです。論説、つまり社説がそうだと言うわけです。

なるほど、そうかもしれない。読者、国民に合わせているのかもしれないのです。そうすると今、日本の読者というのは分かれているのかもしれない、ということです。ただ、それだけでは全体にはならないのです。つまり、政党がこことここに乗れば当選できるということなら、分かるのです。けれども、こんなに分かりやすく二つに分かれているというのは、選択肢や対立軸がないのではなく、むしろあるということでしょう。


●最後に問われるのはセンス、テイスト、体質


曽根 その問題がある一方で、例えば、もっと極端に言えば、テレビだとか、車だとか、あるいは、家電は、イデオロギーでは買っていません。「では、なぜ、あなたはBMWを買うのですか」「あなたはどうしてベンツを買うのですか」「どうして国産ではないのですか」と。それは、センスとか、ライフスタイルとか、イメージとか、選び方はいろいろあって、フロントグリルで買っているという人だっているわけです。

 ですから、そのセンスの問題というのは、最後に行き着くところにあると思うのです。日本の消費者は非常に厳しい選択眼を持っているので、そういう意味で言うと、決してものを見比べて区別がつかないはずはないのです。だから、未開発の分野なのです。つまり、そのセンス、テイスト、体質というところは、やはり問われるわけです。


●人は何に反応するかに政党は敏感であるべき


曽根 今回自民党が問われたのは、やじの問題です。「しょせんやはり体質的に女性蔑視だ」とか、あるいは「利益代弁しかしていないのではないか」とか、体質的なところで、最後は「うっ」とためらうのです。これに対して...
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