自民党「一強多弱」は何が問題か
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
問題は議席の一党集中と政策論争の欠如
自民党「一強多弱」は何が問題か
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
自民党の一党支配が続く中、息苦しい時代になってきた。一体いま何が起こっているのか。政治が生き生きとし、いい意味で力を発揮するための解決策はあるのか。政治学者・曽根泰教氏が今の日本と自民党の政治構造を読み解き、課題と打開策に言及する。
時間:18分17秒
収録日:2015年3月10日
追加日:2015年4月11日
カテゴリー:
≪全文≫

●先例のない政治構造が生まれている


── 今の政党間の関係をみると、圧倒的に自公というか、ほとんど自民党の一党支配になっています。そして自民党の党内的には完全に官邸の支配で、自由にものを言えない雰囲気だと聞きます。二階俊博さん(衆議院議員、自民党総務会長)以外の自民党の人たちは、おそらくこういう不自由な政党の状態を知らないでしょう。今のこういう状態とは、国会にあった緊張感がなくなり、党においてはあまりやることがなくなり、また来年の参院選を経て統制国家になるかもしれないという予感もあります。歴史的に見たとき、今のこの不自由さに似た状況というのは、かつて日本にあったのでしょうか。過去を参照するとしたら、どの時期を見ればよいのでしょうか。

曽根 かつての日本の自民党長期支配の時代、55年体制は、自民党一党が支配する「一党優位制」でした。プレドミナント・パーティー・システム、つまりドミナントな(支配的な、優勢な)状態であるということです。

 ですが、そのときの自民党内は、今とは状況が違いました。選挙にしても中選挙区制でしたから、一つの選挙区に同じ自民党から候補者が5人も出て、5派閥それぞれがその中に入っていたこともありました。そんな時代であり、派閥政治があったのです。

 また、特にいわゆる“農林族”などがそうですが、官僚との関係でも、部会を中心として、一議員、平議員でも拒否権を発動できるということがありました。それは裏を返せば何なのかというと、首相が何かをやろうとしても、自民党の総務会が諾と言わないのです。つまり、各省が準備し内閣が閣議決定して国会に提出する内閣提出法案であっても、自民党の承認を得ないと国会に提出できませんでした。首相がリーダーシップを発揮しようと思っても、党がここでも拒否権を発動できる制度なのです。もっと末端にいくと、族議員が部会で反対すると、そこで止まってしまいます。ですから、自民党の首相は、一見するとリーダーシップがあるように見えたのですが、実はそうではなかったのです。

 しかし、これを変えたのは、一つは選挙制度です。

── 小選挙区になりました。

曽根 小選挙区を中心として、比例代表といっても、基本的には党ですからね。

 もう一つは、首相を中心とする内閣のリーダーシップを強化するというのは、橋本龍太郎首相の橋本行革がそうでした。と...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
中国の「なぜ」(1)なぜ「中国は一つの国なのか」
武力で負けても文化で勝つ? 恐るべし「中原」の同化力
石川好
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑