●短・中期と長期の問題とを切り離し、デフレ脱却を優先したアベノミクス
安倍政権が発足してからちょうど20カ月ぐらいになるでしょうか。内閣改造もあり、今の時点で「これまでのアベノミクスはどうであったのか」という総括をする動きがいろいろ出てきていますし、「では、これからは何が課題なのか」ということも、当然問われることになります。
これにはいくつかの重要なポイントがあると思いますが、アベノミクスにかかわらず、日本の経済は大きな長期的な課題にいくつか直面しています。一つ目はやはり、これだけ増えてしまった政府の借金です。政府債務の存在の下で、財政破たんを起こさないできちんと財政運営ができるかということです。二つ目は、人口が急速に縮小している中で、地方の経済をはじめとして、日本全体で活力を維持できるかどうかということです。それから、三つ目には、社会保障費がこれから急速に増えていくわけですが、この高齢化の中で社会保障費をしっかり賄うことができるかどうかということです。他にも課題はあると思いますが、こういったことが今、日本経済の長期的な課題として問われています。
そして、アベノミクスがこうした課題に対応できるかどうかということが、当然問われてくるのですが、いくつか誤解があると思うのは、このような問題は、安倍内閣だけではなく、それ以前の民主党内閣、あるいは、その民主党の内閣の前の自民党内閣も関わってきた話です。結論から言うと、これは大変難しいテーマであり、どう対応するかということはそう簡単な議論ではありません。
ただ、いわゆるアベノミクスに関して見ると、一つ重要なメッセージがここにあると思うのです。それは何かというと、今申し上げたような日本が直面する大きな長期的な問題ということと、当面日本経済が直面しているもう少し中期、短期の問題を少し切り離して対応したということに、大きな特徴があります。それは、デフレから脱却するということをまず成し遂げて、その上で、先ほど私が申し上げたような中長期の課題にどう対応するかという順番を採ったということです。
それ以前の民主党政権の時代との比較が一番分かりやすいと思いますが、デフレをなかなか止めることができませんでした。その中で、例えば先ほど申し上げた例の一つである長期の政府の債務や、財政問題をどう運営できるかということにな...