秘話を通して考える日韓関係
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秘話を通して考える日韓関係(1)安重根の評価と岸信介の親書
若宮啓文(元朝日新聞主筆)
日韓関係を知るために、忘れてはならない秘話がある。一つは、「暗殺者」と「英雄」という正反対の評価を持つ安重根に関するもの。もう一つは岸信介氏が首相であった時にとった韓国に対するある行動に関するものだ。若宮啓文氏が複雑な日韓関係から掘り起こされた秘話を紹介する。(前編)
時間:14分42秒
収録日:2014年9月11日
追加日:2014年12月2日
カテゴリー:
≪全文≫

●「伊藤博文の暗殺者」「アジアの平和の義士」―日韓で異なる安重根の評価


若宮 今回は、韓国の話でちょっとした秘話をご紹介します。

 韓国では「アンジュングン」と言いますけれど、安重根の記念館が今年になって中国のハルピンにできました。これに日本の菅義偉官房長官が、「あれはテロリストだ。テロリストの記念館をつくるのか」と言って抗議したりして、少し論争になりましたよね。

 安重根は確かに伊藤博文を暗殺した暗殺者なのですが、韓国にしてみれば、強引に韓国を併合に向かわせた当事者として伊藤博文は悪名高く、安重根は悲劇の英雄になっているのです。そこで、その安重根の記念館を、習近平主席が朴槿恵大統領のご機嫌をとるようにつくったという構図で、そのようなことに菅さんがかみついたということなのです。

 今日は詳しく述べる時間はありませんが、日本にも安重根をかなり評価する人がいたのです。伊藤博文を暗殺したこと自体を評価するわけではないけれども、東洋の平和を考えた大変な義士であり、孫文などと似たような思想の持ち主であった、という評価です。

 当初、安重根は日本に大変期待して、日露戦争の時には日本を応援していました。それは、日本が韓国の独立を守ってくれるというようなことを言っていたからなのですが、日露戦争に日本が勝つと、日本と韓国の保護条約を強引に結んで、韓国の外交権を取り上げてしまいました。そのことに怒って、安重根はゲリラ運動に入るのですが、これも弾圧されてうまくいかないものですから、ついに伊藤博文を暗殺してしまったのです。けれども、捕まってからも態度が非常に立派であったということで、観衆が大変心酔したなど、いろいろな話があります。


●日本にも、安重根を研究し正しく評価しようとした財界人、政治家がいた


若宮 話せば長くなるので端折りますが、韓国人が最初に安重根のことを発表したのに共鳴して、日本で安重根の研究会をつくった財界人がいます。小野田セメントの社長までやった安藤豊禄さんという人が一緒に研究会をつくろうと言ったのです。

 この人は安重根のことを本にも書いているのですが、その研究会の記事が新聞に出たら、何人かの人が自分も入りたいと言ってきたのです。その中にいたのが、秦野章さんという人です。思い出しますよね。

―― 法務大臣で警視総監ですよね。

若宮 警視総監をや...

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