在宅医療
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
最も苦しいもの、それは孤独です――マザー・テレサ
在宅医療
堀江重郎(順天堂大学医学部・大学院医学研究科 教授)
日本では現在、病院で最期を迎える人が大多数だが、高齢化、終末医療の費用の問題、緩和医療ということを考えると、在宅医療の必要性は今後増大する。「人間らしい人生の終わり方」のために在宅医療推進の意義を説く。
時間:12分49秒
収録日:2014年1月24日
追加日:2014年2月24日

●1960年代から増加した「病院での最期」


 皆さん、こんにちは。東京の順天堂大学病院で泌尿器科をしております堀江と申します。宜しくお願いいたします。

 私は外科医ですけれども、今日のお話は、在宅医療のお話をさせていただければと思っています。在宅医療というのは、実はあまり耳慣れない言葉かもしれませんが、ご自宅で医療を供給するという形の、一つの医療の形態を言います。現在の日本におきましては、いわゆる病院の治療、これは入院をする治療です。そして外来での治療、これは病院あるいは診療所やクリニックでの診療が当てはまりますが、もう一つ大きな柱として、在宅医療というものが、現在、日本の国でも推進しているところです。

 たとえば、いま人として、人生の最期を迎えて亡くなるとき、どのくらいの方が病院で亡くなるかということなのですが、おそらくほとんどの方は病院で亡くなることが自然だと考えていらっしゃると思います。ところが僅か50年前には、実はほとんどの方はご自宅で亡くなっていました。ちょうど1960年ごろを境にしまして、実は病院で亡くなる方が多くなってきたという現状があります。この背景には、まず医学自体の進歩、あるいは治療薬や治療機器の進歩というのがあって、死というものを治療によって回避できる。医療の非常に大きな目的というのは、病気、疾患あるいは外傷・怪我等によって亡くなることなく、また社会復帰できるということは、とりもなおさず医療の進歩であるということから、多くの方が病院で治療を受けられていることが自然になっています。


●十分とは言い難い日本の終末期医療


 しかし、その延長線上で、もし皆さんがなかなか現在の医療では治らない状況に置かれた場合、どこで人生の最期を過ごしたいかという大きな問題が出てきます。現在の場合、大多数の方は病院で亡くなっているというのが、この日本の現状ですけれども、実はたとえばアメリカやヨーロッパでは、3割から4割の方は自宅で亡くなっているという現状があります。

 実は2010年にエコノミストという雑誌がOECDの加盟国、そしてそれ以外の国々を含めました約35カ国で、人間の最終的な段階、これを「終末期」と言いますが、亡くなる前の医療について、ランキングを行っております。そのなかで日本は、そういった医療環境、すなわち国民のGDPであるとか、あるいは病院の数、医師の数、あるいは治...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「健康と医療」でまず見るべき講義シリーズ
ウイルスの話~その本質と特性(1)生物なのか、そうではないのか
きわめて特異的な「ウイルスと宿主の関係」
長谷川眞理子
アンチエイジングのための「5:2ダイエット」
「5:2ダイエット」活性酸素を減らしてアンチエイジング
堀江重郎
夜間頻尿の原因とその予防方法
夜間頻尿になりやすい人の特徴とその対策
堀江重郎
認知症とは何か(1)疾患の種類と対応
多くの認知症の原因は「脳のゴミ」の蓄積
遠藤英俊
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
飽食時代の「選食」のススメ(1)選食の提唱と「食の多様性」
20億人以上が肥満…飽食の時代に大事な「選食力」3カ条
堀江重郎

人気の講義ランキングTOP10
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(1)「プラチナ社会」構想と2050年問題
5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現
小宮山宏
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司