●160万円と42万円の差は何なのか
再生可能エネルギーは重要ですから、ぜひ大きな産業に育てたいと考えていますが、そこで大事なのは、この先の技術予測です。以前、この「10MTV」で「中小水力発電が有望だ」という話をしました。現在、水力発電所は1kW当たり150万円から、高いものだと300万円、400万円という評価がされていますが、よく考えて技術を設計していけば、1kW当たり50万円くらいになるはずだと私たちは予測しています。それに対して、あるエンジニアの方が、1kW当たり60万円でつくれるモデルを具体的に提示してくれたことを、その講義でお伝えしました。
今回は、蓄電池の世界も同じような状況になってきたという話です。2015年5月の初めに、米国のテスラモーターズ(以下、「テスラ」)が、だいたい1軒の家が1日に発電するくらいの量である10kWhの蓄電池を、8月に約42万円で新たに発売するというニュースが流れました。この意味について考えてみたいのです。Googleなどで少し調べれば出てきますが、現在、日本では10kWhの蓄電池が160万円から200万円程度で売られています。これには一部、補助金が付いたりしているのですが、この160万円と42万円の差は、いったい何なのでしょうか。
●42万円の蓄電池の想定利益率は52%
私たちは、低炭素社会戦略センターを中心にして、蓄電池なども含めた再生可能エネルギーの技術予測、最終的なコスト変化などの予測を行っています。その予測によると、現状のプラント製造規模を10倍程度の1000万kWh規模に大きくして、非常に悪いはずの歩留りを上げていくなどの技術的に可能な話を積み上げていけば、18万2000円で販売できるはずだというのが、私たちの現状の予測です。それに対して、10kWhの蓄電池を160万円で売っているのが、今の日本です。
テスラは電気自動車メーカーで、アメリカでベンチャーからスタートして、すでにかなり大きな企業になりつつあります。今回の蓄電池事業は、電気自動車の電池をつくる技術をベースに、パナソニックと共同で進めています。私もその中身を少し見てみましたが、やはりわれわれの想定通り、非常に巨大な工場をつくることを想定しています。彼らは、今回の蓄電池の利益率を、全てが予想通り動けば52パーセントと算出している...