『言志四録』~佐藤一斎の警告~
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
『言志四録』は西郷隆盛が流罪の時に持参した書物
『言志四録』~佐藤一斎の警告~
田口佳史(東洋思想研究家)
山田方谷を指導した佐藤一斎は、その後教師として多くの人材を輩出する佐久間象山、横井小楠などの師匠として名を高めた人物である。その佐藤一斎には、およそ1130の文章からなる『言志四録』という書物がある。『言志四録』にある佐藤一斎の警告ともいえる教えを、老荘思想研究者・田口佳史氏が語る。
時間:10分10秒
収録日:2015年1月13日
追加日:2015年8月17日
≪全文≫

●山田方谷に指導をした佐藤一斎


 しからば、山田方谷を指導した人はいかなる人物で、どういう教育を施したのかが気になってくるわけです。そこで山田方谷を指導した佐藤一斎という人物を訪ねてみたいと思います。

 佐藤一斎には、40代から80代まで書きつづった、およそ1133の文章からなる『言志四録』という書物があります。これは、西郷南洲(西郷隆盛)が沖永良部島へ流された時に持っていった書物で、沖永良部から帰って来た罪人はいない、死にに行け、という状況の中で、1133ある文章の中からこれは外せない、これこそが自分をしっかりした人物にするだろうというものを101ピックアップしてまとめたものが、『南洲手抄百一言志緑』です。佐藤一斎は、その大本を書いた人で、山田方谷をはじめ、佐久間象山、横井小楠など、いわばその後教師として多くの歴代の偉人・賢人を輩出する人間の師匠、要するに「教師の教師」として名を高めた人なのです。


●「立派な人間になる」と志を立てて学ぶ


 その人が何と言っているのか、『言志四録』の中から見てみたいと思います。

 まずこういうことを言っています。「凡そ学を為すの初は、必ず大人たらんと欲するの志を立てて」、つまり、学ぶ、あるいは、教育を受けるときの生徒の姿勢として何が最も重要なのかというと、立派な人間になるために自分は学ぶのだ、そう自分によく言い聞かせて学ぶことです。そして、書に接するときは、いつも必ず「大人たらんと欲するの志を立てて」いる、そういう人間が読むということで、「然る後に、書は読む可きなり」となります。

 そして、こう続きます。「然らずして、徒らに聞見を貪るのみならば」、つまり、立派な人間になろうなどという確固とした志もないのに、多くの書物をむさぼるのは、「則ち或いは恐る、傲を長じ非を飾らんことを」、つまり、論弁や理屈ばかりが長けてきて、結局、言い逃れをする能力にしかならない、ということです。要するに、「おかしなところに使われて仕舞いだよ」と言っているわけです。やはり、学ぶ基本は、「必ず大人たらんと欲するの志を立てて、然る後に、書は読む可きなり」ということです。

 ここには、それだけの人間を輩出した教師の教師としての佐藤一斎の教育論というべきものが出ているわけです。


●理性や人間性を尽くす者は「君師」だった


 それから、もう一...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
道徳と多様性~道徳のメカニズム(1)既存の道徳の問題点
多様性の時代に必要な道徳とは…科学的アプローチで考える
鄭雄一
神話の「世界観」~日本と世界(1)踊りと物語
世界の神話の中で異彩を放つ日本神話の世界観
鎌田東二
日本文化を学び直す(1)忘れてはいけない縄文文化
日本の根源はダイナミックでエネルギッシュな縄文文化
田口佳史
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(1)史上最大の問題作
全米TOP10大学の必読書1位が『ポリテイア(国家)』
納富信留
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典

人気の講義ランキングTOP10
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
歌舞伎はスゴイ(2)市川團十郎の何がスゴイか(後編)
歌舞伎十八番を定めた七代目市川團十郎、一番モテた八代目
堀口茉純
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(6)秀吉との信頼関係と秀長の軍事能力
文武両道の名将…大大名たちを魅了した秀長の器量とは?
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
「次世代地熱発電」の可能性~地熱革命が拓く未来
地熱革命が世界を変える――次世代地熱の可能性に迫る
片瀬裕文
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(6)習近平のレガシー
国力がピークアウトする中国…習近平のレガシーとは?
垂秀夫
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
「逆・タイムマシン経営論」で見抜く思考の罠(2)「400万台クラブ」という幻
「400万台クラブ」―負の歴史に学ぶ本質の見極め方
楠木建