ギリシャ危機~経済指標から見る今後の展望~
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
なぜギリシャは危機的事態に陥ったのか?
ギリシャ危機~経済指標から見る今後の展望~
植田和男(第32代日本銀行総裁/東京大学名誉教授)
一応の合意にたどりつつある今回のギリシャ問題だが、まだギリシャ議会を通す作業に加え、ユーロ諸国による具体的支援を詰める作業も残っているため、先行きは不透明だ。一体なぜギリシャはこのような危機的事態に陥ったのか。経済学者で東京大学大学院経済学研究科教授・植田和男氏がこれまでのギリシャ情勢を整理し、今後の展望について語る。
時間:18分16秒
収録日:2015年7月15日
追加日:2015年7月17日
≪全文≫

●ユーロ加盟がギリシャ問題のポイント


 それでは、今日は、先日大騒ぎした後とりあえず当面の合意にたどりついたように見えるギリシャ情勢について、おおまかな考え方を整理するため、お話ししてみたいと思います。

 ただ、とりあえずの合意にたどりついたように見えますが、これをお話ししている時点では、まだギリシャ議会を通すという作業が残っていますし、その後はユーロ圏諸国による支援をより具体的に詰めるという作業も残っていますので、当面の話としてどうなるか、まだ分からないという段階ではあります。そこで、今日はもう少し長いスパンから、こういう事態に陥った理由のいくつかについてお話ししてみたいと思います。

 全体として大きなポイントは、ギリシャがヨーロッパの通貨同盟であるユーロに加盟したことが、加盟する途中から引き続き大問題であり続けているということです。その上、ギリシャ以外の加盟国にとっても大きな問題につながる可能性を秘めているということでございます。


●通貨同盟が持つメリットとデメリット


 最初に押えておくポイントとして、通貨同盟一般が持っている利点と問題点について整理しておきたいと思います。

 通貨同盟とは、違う国同士で通貨を同じにしてしまうことですが、例えば、ヨーロッパで通貨が違っていると、国境を越えて旅行するたびにお金を換えないといけないため、ものすごくコストが掛かります。通貨が一緒であれば、そのコストは無くなるという大きなメリットがあります。

 さらに大きなメリットとしては、金融資本市場が同じ通貨で一体化することになりますのでマーケットが広くなり、多くの国、あるいは企業にとって、それ以前よりも低いコストで資金調達ができるという点が挙げられます。

 逆にデメリットとしては、通貨を一本にしてしまいますから、金融政策が当然一つになってしまうということで、加盟国一国一国の事情に合わせて金利を上下させるということができなくなってしまうという点があります。通貨同盟に入っていなければ、自分の国が不況の場合、金融緩和をすればいいのですが、通貨同盟に入ってしまうとそれができなくなるということです。


●メリットの方が大きい二つのポイント


 メリット、デメリットを考えた場合に、デメリットはあるけれども、それでも通貨同盟に入った場合、メリットの方が上回るのはどういう...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史

人気の講義ランキングTOP10
折口信夫が語った日本文化の核心(1)「まれびと」と日本の「おもてなし」
「まれびと」とは何か?折口信夫が考えた日本文化の根源
上野誠
編集部ラジオ2025(33)2025年を振り返る
2025年のテンミニッツ・アカデミーを振り返る
テンミニッツ・アカデミー編集部
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(3)DSA化した民主党と今後の展望
DSAの民主党乗っ取り工作…世代交代で大躍進の可能性
東秀敏
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
世界哲学のすすめ(1)世界哲学プロジェクト
日本発!危機の時代に始動する世界哲学プロジェクトの意義
納富信留
経験学習を促すリーダーシップ(4)成功を振り返り、強みを伸ばす
なぜ強みが大事なのか?ドラッカー、西田幾多郎の答えは
松尾睦