思考するときに相手の立場をどのくらい考えるか
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
当たり前の教訓が一部政治家には当たり前ではないらしい
思考するときに相手の立場をどのくらい考えるか
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
「相手の立場に立って考えなさい」。当たり前すぎる教訓のはずだが、一部の与党政治家には「当たり前」ではないらしい。政治学者・曽根泰教氏が、実際に体験したある驚くべき経験をもとに与党政治家のメンタルモデルに切り込む。
時間:5分40秒
収録日:2015年7月13日
追加日:2015年8月6日
カテゴリー:
≪全文≫

●「対立者の意見を理解する必要はない」!?


 今回のタイトルは、「思考するときに相手の立場をどのくらい考えますか」です。どうしてそういうことを考えたかといいますと、こういうことがあったのです。

 自民党の当選回数が少ない良質な人たちと議論していたとき、ある人が、研修の手法としてディベートをやりたいと言いました。私もディベートの手法を知っていますし、昔、授業でもずいぶん使っていました。ただ、今は使っていません。それには理由があります。ディベートという手法には、良さ、悪さ、両方があります。

 ところが、ディベートという手法を学びたいと言ったときに、二通りの批判、文句が出てきたのです。一つは、自分たちは政治家で、外国留学の際などにさんざん経験したから、もうその手法を改めてやることはないという立場です。

 もう一つは、どうだったか。私は、ディベートの手法の根幹は、自分と違う立場の人の思考方法を理解することにあると思います。「プロ(賛成)」と「コン(反対)」に分かれて、どちらでも立論できるというのはディベートのいいところです。反対側の人たち、自分とは違う立場の人たちの主張を理解して、その弱点、それが主張したい内容を分かったうえで、こちらの主張をするというディベートの良さがあります。ところが、先ほど言った「ディベートはもうやってきたからいいよ」という、海外経験のあるようなグループではなく、もう片方のグループは、「われわれは反対側の意見なんかを学ぶ必要はないのだ」というのです。「国民から付託されている今の自民党の主張を訴えることが使命なのだ」というのです。

 この人たちの発想に、私は愕然としました。彼らは良質な人なのです。自民党の若手の良質の人の中に、「反対側の意見を聞く必要はなく、いま自分たちが思っている主張を国民に訴え続けること、いかに上手に訴えるか、そちらが重要なのだ」と考え、そこに使命感を持っている人がいる。それがもっと劣悪な形になると、マスコミにせよ、主張にせよ、自分と違う人間を殲滅してしまう方がいい、つぶした方がいいという議論になってしまうわけです。


●マスコミに対する被害者意識


 また、そこで同時に理解したのは、やはりマスコミに対して強い被害者意識を持っていることです。権力を持っている人間は、いつも批判され、嘘ばかり書かれている。それこそ「...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
徳と仏教の人生論(3)無分別知と全人格的思惟
般若とは何か――秋月龍珉からの命題を探求し到達した境地
田口佳史