10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
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小宮山宏座長がプラチナ社会に向けて送る力強いメッセージ

2017年頭所感-プラチナ社会へ合理的楽観主義のすすめ

小宮山宏
東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長
情報・テキスト
東京大学第28代総長で株式会社三菱総合研究所理事長の10MTVオピニオン座長・小宮山宏氏が、2017年を「プラチナ社会」への第一歩の年と位置付け、力強いメッセージを送る。これからはAIをはじめとする技術革新で新たな質を伴った経済成長を目指す時代。今、私たちに必要なのは、合理的かつ楽観的な未来を切り拓く発想だ。
東京大学第28代総長で株式会社三菱総合研究所理事長の10MTVオピニオン座長・小宮山宏氏が、2017年を「プラチナ社会」への第一歩の年と位置付け、力強いメッセージを送る。これからはAIをはじめとする技術革新で新たな質を伴った経済成長を目指す時代。今、私たちに必要なのは、合理的かつ楽観的な未来を切り拓く発想だ。
≪全文≫

●2016年の幕切れは顕著な保護主義的傾向


 新年明けましておめでとうございます。昨年(2016年)は年の暮れ近くになって、国際的にもいわゆる保護主義の動きがきわめて顕著になり、いろいろと不安を抱く一年だったのではないでしょうか。イギリスのEU離脱(Brexit)があり、12月のオーストリア大統領選では中道左派が勝ったわけですが、イタリアでは国民投票で憲法改正案が否決されたことで、国粋主義的な政党の勝利と受けとめられています。

 何しろ、最大の動きはアメリカです。世界の中で圧倒的に強いアメリカではなくなったけれども、まだまだ世界を引っ張る国であるアメリカで、ドナルド・トランプ氏のような人が出てきました。今のところ皆、トランプ氏の情報を集めようとしているわけですが、やはり「これからどうなるかちょっと分からない」というのが大勢の考えるところで、もしかしたら、トランプ氏自身も全体的にどうなるかということは分かっていないのかもしれない、という思いすらあります。


●低成長化時代-イノベーションによる生産性向上が鍵


 そういう意味では、不安な面は非常に大きいのですが、一つお話ししておきたいことがあります。昨年の8月、9月に相次いで経済に関する非常に良い本が出版され、それぞれベストセラーになりました。一つは吉川洋先生の『人口と日本経済 - 長寿、イノベーション、経済成長』(中央公論社)という本で、もう一つは水野和夫先生の『株式会社の終焉』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)という本です。また、私事で恐縮ですが、『新ビジョン2050 地球温暖化、少子高齢化は克服できる』(日経BP社)という私の本も10月に出ています。

 この三冊を読んでみると共通点があり、経済、あるいは地球といったものに対する現状認識が極めて似ているのです。水野先生は、資本主義は中心と周辺からできていて、その周辺への拡大が終わったとして経済の成長は止まるという考えをお持ちで、今度はもっとゆっくりと地域を見るという発想です。成長を求めないという時代が中世にあったのですが、その「中世に戻る」というのが水野先生の仰っていることです。

 吉川先生は、経済成長が止まってきているという事実の認識はまったく同じですが、未来に対してもう少し明るい言い方をされています。1955年から1970年にかけて、日本は高度成長の真っただ中にあったわけで、年率に換算して約9.6パーセントの成長をしてきました。これは皆さんよくご存じの話ですが、そのうちで労働人口の増大は年率約1.3パーセント程度に過ぎず、残り約8.3パーセントは、労働生産性その他の生産性の向上なのです。これから人口減少時代に入るわけですが、人口減少そのものは何の問題もなく、イノベーションが起こるかどうかが問題だ、というのが吉川先生の主張なのです。


●2017年、飽和状態からプラチナ社会へ舵をきる


 こうした経済学者が唱える「低成長化」ということを私のような科学技術者から見ると、それは「飽和」、あるいは「世界の飽和」ということです。私は著書の中で、「人口の飽和」「人工物の飽和」「物質の飽和」ということで、飽和がキーワードであるという言い方をしてきたのですが、そのことと低成長化はほぼ完全に符合すると思います。

 そして、私はその先どうすればいいかということで、「プラチナ社会」というものを提案してきました。それは、新しい質を求めるということで、ただ長生きをするのではなく、もっと誇りのある長生きをしたいというニーズがあるはずだ...
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