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「新自由主義」も「新保守主義」も元々の意味が全然違う?

日本人が知らない自由主義の歴史~後編(12)「新自由主義」「新保守主義」とは

柿埜真吾
経済学者/思想史家
概要・テキスト
いままで見てきたように、ニューリベラリズム、ネオリベラリズム、リバタリアニズムは、それぞれ意味が全く異なる。にもかかわらず、いずれも日本語では「新自由主義」と訳されている。実は、そこに日本でこれらの違いがなかなか理解されない原因がある。さらに、同様の例として「新保守主義」と訳される「ニューライト」と「ネオコンサバティブ(ネオコン)」がある。実はこの言葉は、英米と大陸欧州でも意味が異なったりするのだが……。今回はそれぞれの言葉の混乱が招く悲喜劇について解説していく。(全13話中12話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
≪全文≫

●ニューリベラリズム、ネオリベラリズム、リバタリアニズムをまとめると…


―― 今見たように、リバタリアニズムについても、本当にいろいろな見方があるということです。

 ここであらためて、今まで見てきたニューリベラリズム、ネオリベラリズム、リバタリアニズムをまとめると、まずニューリベラリズムについては、人々が望ましい人生を送る(実質的自由を手に入れる)には、政府が経済に介入して大幅な再分配が必要だと主張する。場合によっては社会主義を支持することもある、ということですね。

柿埜 ええ。今の「アメリカ流のリベラル」は、基本的にこれ(ニューリベラリズム)です。

―― 日本でも、特に政治的に「リベラル」と言われる場合には、この色彩が強いですね。それに対してネオリベラリズムとは、社会主義と自由放任の両方を否定し、自由市場を活用しつつ経済を安定させるためには、福祉や独禁法などの制度が必要である、という中道派の考え方です。これは、どちらかというと今日の講義では、こういった思想グループというよりは戦後に行われた……。

柿埜 そうですね。どちらかというと、実践的な発想だったわけです。本人たちもさほど自分で「ネオリベラル」と名乗っていたわけではないのですが、それが途中から変なレッテル貼り、特に1990年代以降はレッテルになってしまって、よく分からない、とにかく「悪魔的な自由放任主義」のような意味になってしまっています。

―― 意味が分からない言葉になってしまったと。もともとは、先ほども先生が定義されたように「政府を万能と考えるか、政府は危ないと考えるか」程度の違いだということですね。

柿埜 それくらいのニュアンスですね。

―― そのような形でリベラルという言葉が混迷、混乱してきてしまったので、「リバタリアニズム」という言葉が出てきます。こちらは個人の自由を何よりも尊重し、それを妨げるような社会的規制にも経済的規制にも反対する。過激な立場は無政府資本主義だけれども、穏健派は古典的自由主義をとる。アメリカで「リベラル」という言葉が社会民主主義を指すようになったため、代わりに使われるようになったと。こういった整理になるのですね。

柿埜 非常に混乱が多いわけですが、整理すればだいたいそのようになります。


●「新自由主義」「新保守主義」は何...

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