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日本で消されたマッカーサー証言~一体誰の命令なのか~

第七章 歴史を愛する日本人の崇高な使命(9)なぜ重要な証言が知られなかったのか

渡部昇一
上智大学名誉教授
情報・テキスト
アメリカ上院軍事・外交合同委員会で語ったマッカーサー証言を、日本のマスコミは一切報道しなかった。アメリカで、その記事が出ていることを知らなかったわけではない。日本のマスコミは、マッカーサーが「日本は自衛のために戦った」と証言した部分を省いて報道しているのだ。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第七章・第9回。
時間:04:16
収録日:2015/02/02
追加日:2015/09/21
≪全文≫
 さて、マッカーサーが昭和26年(1951)5月3日に、アメリカ上院軍事・外交合同委員会で語ったマッカーサー証言の中でも特筆すべきは次の部分であろう。

 “Their purpose, therefore, in going to war was largely dictated by security.”
 (したがって彼らが戦争に飛び込んでいった動機は、大部分が安全保障の必要に迫られてのことだったのです)

 これは大変重要な言葉なので、私は学生に限らず多くの人に、これを英文で暗記することを勧めている。

 だが、このマッカーサー証言を使って、日本政府が歴史問題に対する反論を行なった例を私は知らない。それどころか、私が出会った外交官の中でマッカーサー証言を知っていたのはたった一人で、それも最近知遇を得た人である。私はこの分野ではまったくの素人だったが、こういう証言があることは噂で聞いていた。しかし実物を見なければ真実がわからないので、東大の小堀桂一郞氏に「だいたいこのあたりを調べていただけませんか」と依頼した。すると小堀氏は東大の新聞研究所でニューヨーク・タイムズ紙に出たマッカーサー証言を探し出し、ファックスを送ってくれた。小堀氏も、これは重要なことだと理解して探してくださったのである。

 その一部分を日本語に訳し、私は日本のメディアで初めてPHP研究所の月刊誌『Voice』に載せた。

 マッカーサーがこの証言をした昭和26年(1951)5月といえば、連合国による日本の占領がまだ続いていた頃だ。その当時、ニューヨーク・タイムズ紙にも出ているこんな重要なニュースが、日本の新聞あるいはNHKで放送されていたら、と思わずにはいられない。

 当時は、戦地から引き揚げてきた軍人たちが数多く生きていたから、彼らはどんなに喜んだことか。あるいは自分の夫や兄弟、親、親族が戦場で倒れたり亡くなった人たちも、「彼らの死はけっして無駄ではなかった。日本を守るために戦ってくれたんだ」と、もっと誇りに思ったのではないだろうか。

 ところが日本のマスコミは、このニュースを一切報道しなかった。

 彼らはアメリカで、その記事が出ていることを知らなかったわけではない。たとえば朝日新聞の縮刷版を見れば、マッカーサーが証言したことについての記事はきちんと出ている。だが、日本のマスコミは、マッカーサーが「日本は自衛のために戦った」と証言した部分を省いて報道しているのだ。

 あえて善意に解釈すれば、当時はまだ占領軍がいたから「その部分は省け」と命令された可能性はある。ならば、その翌年にサンフランシスコ平和条約が発効し、日本は主権を回復しているのだから、マスコミはその時点で、「実はマッカーサーはこんなことを証言していた」と報道すべきだった。ところが私の知る限り、それ以降、現在にわたって新聞や地上波のテレビがマッカーサー証言を取り上げたケースはない。

 これはまったくの希望にすぎないが、もし、NHKでゴールデンタイムに毎日五分ぐらいの枠を取り、マッカーサー証言を読むことを半年でも続ければ、こうした知識は普及するだろう。政府が後押しすることは難しいかもしれないが、そういうことができれば、いま日本がさまざまな面で手をつけられないでいることも一気に解決する。東京裁判そのものがご破算になるから、教育にも抜本的な変化が起こるに違いない。

 「事、ここに至っては自存自衛上開戦止むを得ず」という東條証言...
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