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『古事記』に学ぶ企業統治…慈愛のシラス、力のウシハク

松下幸之助から学んだこと~経営の根本は「シラス」にあり

上甲晃
志ネットワーク代表
情報・テキスト
今はもう「パナソニック」と社名が変わった「松下電器産業」という会社は、社員が辞めるとき、皆が「いい会社に勤めたな」と言ったという。現代において、そのような会社はどれほどあるだろうか? 志ネットワーク代表・上甲晃氏が松下幸之助から学んだ日本的経営の原点について、『古事記』にも記されている二つの重要キーワードをもとに解説する。(2015年8月26日開催『2015年 経営革新協会オープンセミナー』上甲晃氏講演「松下幸之助に学ぶ」より)
時間:13:35
収録日:2015/08/26
追加日:2015/10/12
≪全文≫

●松下電器とパナソニックの違い


 皆さん、こんにちは。ご紹介をいただきました、私は上甲といいます。よろしくお願いをしたいと思います。

 私は、松下電器という会社に入りました。今は、この松下電器という名前はありません。パナなんとかといって、なかなか覚えられないんですけれども。「パナソニック」と聞くと、なんとなく私がいた松下電器とは違うような感じがするんですよね。別の会社、何か全然違う会社のような気がして、どうしても私はパナソニックと言えず、何が違うのかな、といろいろ考えることがあります。

 私は、同期に入社した人たちと毎年温泉に行っていまして、もう20年ぐらいずっと続けています。わずか10名ぐらいのメンバーでやっています。

 去年、高山へ行った時に、一杯飲みながらこんな話が出たんです。「俺たちが会社辞めるときは、“いい会社に勤めたよね”と、みんな言ったよね。地位も立場も関係なく、誰もが会社を辞めるときには、“いい会社に勤めたな”と、みんな言ったよね。家族も言ってたよね」。しかし、そういうことを最近言わなくなった、と言うんですよね。そういう話題になったんです。

 売上は、あの頃よりもはるかに大きくなりました。あるいは、知名度もよくなりました。「いろいろな意味において、私たちが在籍していた時よりもはるかにグローバルな企業になったけれども、社員が辞めるときに“いい会社に勤めたな”と言わなくなったというのは、一体どうしてだろう?」という話になりました。


●違和感があった社長の言葉-黒字を取り戻す


 何が違うんだろう? ということを、私はいろいろ考えました。あまり批判的なことを言ってもいけないと思うんですが、いまパナソニックも少しこの円安ブームの中で、経営が持ち直していますけれども、非常に苦しい時期がここ数年前にありました。その時、社長がテレビのインタビューに答えてこんなことを言っていました。「一刻も早く赤字を克服して黒字を取り戻したい」という発言をしていました。当然でしょうね。

 だけど、私はその瞬間に、少し違和感があったのです。最初に黒字を取り戻そうとすると、どうなるか。手段を選ばない。例えば、まず人を大幅に減らそうと思うんですよね。思い切ったリストラで人を減らそうとしますね。あるときには、1万人のリストラをしたということが、経済雑誌では大変な成功談として紹介されました。そして、V字型回復したといって、成功談のように言われました。けれども、社員からしたら絶対いい会社とは思えないんですよね。クビを切られる、あるいはクビを切られないまでも、自分も明日クビを切られるかもしれないという瞬間というのは、社員にとって不安の連続です。

 あるいは、不良事業、採算のとれない事業を切り捨てる。これも大胆な経営改革と言われます。ですが、長年、20年、30年とその事業をやってきた人間にとっては、それをばっさりと他に売却されるというのは、身を切られるような思いです。その一つ一つを考えれば、なるほど、会社の黒字を回復するためには大胆な経営改革だけれども、社員一人一人にとっては身を切られるような思いなんです。


●精神を取り戻せば黒字は戻る


 私はこう思ったんです。取り戻すべきは黒字ではない。精神なんです。まず精神を取り戻すことが第一なんです。精神を取り戻せれば必ず黒字は戻ると考えるのが、経営の原点ではないかな、と思います。その精神を抜きにして黒字を取り戻そうとすると、手段を選ばない経営になって、結果的には従業員の皆が「いい会社に勤めた」と思えない。

 こういうのは、ある意味においては滅びの発想ではないかなと考えます。私がいつも思うのは、根本精神ということです。何のために仕事をしているんですか? 何のために経営をしてるんですか? という根本を定めずに、方法論ばかりにとらわれていくと、どんどん逆流とジリ貧になっていくんじゃないかなということを、私の信念として実は考えています。

 ですから、私の口癖はこうです。「流行りを追うな。真理を追え」。流行りを追うから廃り、流行り廃りがあるんですよね。だから、私は、時代を越えて変わらない真理というものをしっかりと腹の底に据えなければ、やはり浮き沈みをしていくんじゃないか、ということを、実は強く自分自身も感じています。


●幣立神宮の五色神祭


 そういう中で、この間の日曜日に、私も73年の人生の中でまれな経験をしました。初めて経験しました。熊本県の阿蘇という所に、幣立(へいたて)神宮というお宮さんがあります。日本で有数のパワースポットだと言われているんです。私は長い間、パワースポットのことを間違って「パワーポイントだ」と言っていましたら、パワーポイントは映し出すもので、パワースポットと違うらしい...
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