●慎重に検討を重ねた「5パーセントから8パーセント」の道
今日は、消費税の話をしたいと思います。ご案内のように、2014年4月より消費税を5パーセントから8パーセントに上げることがもう決まっています。その後、2015年にさらに10パーセントにまで上げるかどうか。これが、今年の政策論議のなかでもこの先の大きなテーマになるでしょう。
消費税を5パーセントから8パーセントに上げることは、昨年9月に安倍総理が決めています。その決断の前には多くの専門家が官邸に招かれ、議論が重ねられました。
一番の大きなテーマは、「ここで消費税を上げると経済が失速して、せっかくのデフレ脱却の芽を摘み、元も子もない状態になるのではないか」というような懸念を示す専門家が何人もいて、大きな論点になったのだろうと思われます。
しかし、そうは言いながらも、やはり日本経済にとっては消費税を上げることのほうが好ましい。また、消費税引き上げで生じるマイナス効果については、追加的な対応策を行っていくことで、ある程度抑えられるのではないかという判断が行われて、消費税を上げることになったのです。
●消費税率引き上げは、景気の失速をもたらす?
いくつかのポイントを申し上げますが、私は個人的には、消費税を上げることによる景気の失速については、それほど心配していない立場です。
どうしてでしょうか。まず、消費税を上げると、なぜ景気が失速するのかを考えましょう。これは増税前の「駆け込み需要」が原因だと言われています。消費税が上がると決まったら、当然の心理として税金が安いうちにたくさん買っておきたくなる。そういう駆け込み需要が起これば、これも当然、増税後には「駆け込み反動」という形で需要が落ちるわけです。この「駆け込み需要―駆け込み反動」があると、やはり「反動」のところで景気は大きく失速するのではないかと言われています。
しかし、これは常識的に考えてみれば、駆け込み需要と駆け込み反動はプラスマイナスでキャンセルするはずですから、少し長い目で見ればそれほど大きな問題ではありません。今年の日本で言えば、4月に消費税を上げて、4~6月あたりまでは相当影響を受けるかもしれないが、7月以降はまた元に戻っていくだろうというのが、一般的な見方だと思うのです。
現実問題として、ヨーロッパ諸国などは過去に何度もいろいろな国で消費税...