欧州から見たアベノミクス
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
巨大な財政赤字と高齢化による社会的費用増加が鍵
欧州から見たアベノミクス(3)成否の行方に強い関心
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
ヨーロッパは、デフレが進行して立ち直れない日本病になるのは困ると考えている。そのため、アベノミクスが成功するか失敗するか、その行方に大きな関心を寄せている。彼らはアベノミクスをどう見ているのか。また、どこに注目しているのか。千葉商科大学学長・島田晴雄氏が、フランスで行われたアベノミクス講義後の質疑応答について語る。(全3話中第3話目)
時間:13分37秒
収録日:2015年3月31日
追加日:2015年5月25日
≪全文≫

●足並みそろわぬ欧州がアベノミクスを注視


 ECB(欧州中央銀行)のマリオ・ドラギ総裁は、ヨーロッパは大規模な金融緩和をしなければ息を吹き返さない危機的状況だという認識が強いのです。ギリシャもイタリアもスペインも金融緩和をやってくれと賛成なのですが、ドイツは大反対なのです。そんなことをしたら、主として南欧の生産性の低い国の財政規律がなくなってしまうため、中央銀行が「財政規律はなくてもいい」とお墨付きを出すようなものだ、と大反対しているのです。ただ、ドラギさんが金融緩和を決めて、各国で国債を買いなさいと命令したものですから、ドイツも嫌々ながら国債を買っています。とはいえ、買うたびにECBを批判しているのです。ドイツ首相のアンゲラ・メルケルさんも反ECBで渋い顔をしています。

 ですから、ヨーロッパは団結ができないのです。そういう状況だから、ますますアベノミクスに興味があるのです。アベノミクスが本当に第一、第二、第三の矢でデフレを脱却したとか、経済成長が始まったというと、それを教科書にしてヨーロッパが再団結できるかもしれないという期待感もおそらくあると思います。そんなことで、今回、私は鮮烈な印象を受けました。皆さん、かなり真剣でした。場合によっては日本以上にアベノミクスの動きを見ているかもしれません。


●安定的に見える日本が抱える社会保障問題


 私は相当詳しい説明をしたのですが、いろいろな質問が会場から出てきました。

 一つは、日本の成長率は確かに低いけれど、そこそこ安定的に動いているのではないか、そんなにパフォーマンスは悪くないのではないか、という質問で、同じような内容の質問がいくつかありました。それはそうかもしれません。しかし、私が皆さんに強調したのは、日本の抱えている巨大な財政赤字問題、それから高齢化に伴う社会的費用の増加です。今のままでは、日本の社会保障制度が破綻するのは目に見えているからです。

 なぜかといえば、日本の社会保障制度が完成形になったのは1960年代初頭ですから、もう50年前のことなのです。その頃、日本はピラミッド型の人口だったため、それに合わせた社会保障制度がつくられました。今はこういう人口構成(つぼ型)になっているでしょう。こういう人口で、50年前の社会保障体系が合うはずがありません。ですから、大問題なのです。

 特に...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
島田晴雄
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦