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1995年の円高と2010年の円高の大きな違いとは?

「実質実効」の円レートと今後の為替動向

伊藤元重
東京大学名誉教授
概要・テキスト
アベノミクスの金融緩和で超円安となった日本経済。重要なのは今後の円レートの行方。そこで重要となるのが「実質実効為替レート」だ。そこから見えてきた円の実力を手がかりに、今後の為替動向を読む。
時間:11:59
収録日:2014/03/14
追加日:2014/04/03
カテゴリー:
≪全文≫

●極度の円高が是正された現在、重要なのは今後の為替の動き


アベノミクス以来、為替は大幅に円安になってきました。それが、輸出企業などの業績を非常に良くしており、日本経済全体で見ると、円高から円安に変わることによって、経済にとって非常にプラスになる面を多く感じているわけです。
もちろん、電力業界や、石油などを輸入して国内で加工する化学メーカー、あるいは流通業など、一部の輸入が重要な産業から見ると、むしろ円安によってマイナスの影響を受けているところもあります。
とは言え、総じて、為替の極度な円高が是正されたことによって、日本経済全体に安心感が出てきています。
重要なのは、これから為替がどこへ向かっていくのかということです。
もちろん、将来の為替の動きを予想するということは、ほとんど不可能です。これからも予想できないような、いろいろな変化が起こるわけです。ウクライナで紛争が起きるとか、中国の経済がどうなるかわからないとか、アメリカの政治がどちらを動くかわからないとか、いろいろなことがあるわけですから、断定的に経済、為替の予想をすることはできませんが、ただ、少なくとも、いま日本の円というレートがどのようなところにあるのか、ということを客観的に見ておくことは、非常に大事だと思います。

●円の実力を把握するために必要な「実質実効為替レート」


専門家は、為替レートの動きを見るときに、実質実効為替レートを使います。
僕は、「テレビや新聞で報道されている円ドルレートや円ユーロレートを名目為替レートと言い、それで為替を議論するのは素人なんだよ。プロは、実質実効為替レートで見ますよ」と学生によく話しをします。
そこで、実質実効為替レートについてですが、政府や日本銀行のホームページにいけば、普通にそのデータを見ることができると思います。詳しいことは、今日ここで述べることはしませんが、一言で言うと、「円という通貨が、ドル、ユーロ、人民元、あるいはウォンやポンドなど、多様な通貨に対して、平均的にどのような動きをしているのか」ということです。つまり、例えばドルならドルという一つの通貨ではなく、「世界の多様な通貨のなかで日本の円が平均的にどう動いているか」という意味での特徴と同時に、そしてこれが大事なことですが、為替というのは物価にとても影響を受けるものですから、「物価の影響も勘案し...
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