「不確実性」と「不都合」の確率分布
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
「異常気象」はマスコミ用語! 気象に異常も平均もない
「不確実性」と「不都合」の確率分布
住明正(理学博士/東京大学名誉教授/東京大学未来ビジョン研究センター 客員研究員)
長期の将来予測に付きまとう問題は「不確実性」だ。しかし、全ての事象は基本的に確率統計的事象である。地球温暖化も「異常気象」の問題も、人間の心理を抜きには考えられない。われわれが感じる「不確実性」と「不都合」について、国立研究開発法人国立環境研究所理事長・住明正氏が明快に解き明かす。
時間:8分31秒
収録日:2015年11月27日
追加日:2016年2月4日
≪全文≫

●「不確実性」を言うのは「不都合」なとき


―― 21世紀のサステイナブル社会実現のため、将来予測に付きまとう「不確実性の問題」とどう向き合っていけばいいか

住 これは、「不確実性」という言葉にいろいろな意味合いが込められ過ぎているのだと思います。不確実だから「まったく分からない」のかというと、多くの人はそうではなく、「ほとんど分かっているのに、一部分からない」と思っているわけです。

 だから、実は自分に不都合なことが起こるときに限って「不確実性」と言うわけです。都合のいいときには、本当は不確実であっても、ほとんどの人が確実だと思っています。これが人間の心理です。

 「不確実性の問題を取り上げる」と言っている人の場合は、そういう背景が裏側にあることがほとんどなので、注意をした方がいいと思います。もちろん将来のどんなことも、確率的に100パーセントの予測ができるわけはありませんが、相当程度の予測はできるからです。

 例としてよく挙げるのが、サラリーマンの日常です。大体の人は朝出かけて、夜は家に帰ってくる。これはもうほとんど確かなことです。何時に帰ってくるのか多少ばらつきはありますが、大体は夜7時か8時になると帰ってきます。そうすると、「不確実」なのは事故が起こるかもしれないということです。しかし、それは確率的に少ないため、多くの人は「ほとんどない」と思って無視しています。そういうことに基づいて、日々の生活はちゃんと営まれているため、ほとんど十分に社会は回っているということです。


●気候変動で「確実に言えること」と対策のギャップ


住 温暖化の問題についても、その程度の確実さで言えることはあります。例えば、「非常に暖かい気候が増えてくる」、「非常に強い雨が増える」、「強い台風が来る」などです。しかし、「いつ、どこに」という細かいことを言えば、それは決められない。そういうことは、現実でもそれほど分からずに過ごしているわけです。

 今日・明日・明後日のことも「確実には」分かっていないのですから、同じことなのです。そこのところをよく理解しながら、全体の流れとしてはよく分かることもあるので、それに基づいた手当てをしていくことが、やはり非常に大事だといえます。

 例えば、日本で明らかに大きな問題といえば地震です。南海トラフの大震災が70年から100年のうち...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
レアメタルの光と影(1)イントロ
イノベーションがレアメタルをコモンメタルにする
岡部徹
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治
知能と進化(1)知性と身体性
AI、ディープラーニングとは…知能と身体性は不可分か?
長谷川眞理子

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(28)自由喪失の危機に考えるハイエク-1
斎藤幸平氏に物申す…自由喪失の危機に読みたい自由主義の近現代史
テンミニッツ・アカデミー編集部
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
柿埜真吾
徳川将軍と江戸幕府~井伊直弼編(2)開国の是非と将軍継嗣問題
「尊王攘夷か佐幕か」…天皇絶対主義に結びつく厄介な問題
山内昌之
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
日本人が知らない自由主義の歴史~後編(1)ニューリベラリズムへの異議
ハーバート・スペンサーとダイシー…20世紀の危機の予言者
柿埜真吾
中国春秋戦国時代と始皇帝(8)合従軍と秦の激闘
合従軍、秦に迫る!…秦王・嬴政を滅ぼしかねなかった激戦の史実
鶴間和幸
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保
死と宗教~教養としての「死の講義」(5)仏教の死:日本編
極楽往生、坐禅、法華経…日本人はいかに死を乗り越えるか
橋爪大三郎
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(1)なぜ「中国史はつまらない」のか?
驚きの中国史~「中国史はつまらない」という通説の裏の波乱の真実
宮脇淳子