伊勢志摩サミットを総括する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
日本と世界の経済認識のズレが露見した伊勢志摩サミット
伊勢志摩サミットを総括する
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
政治学者で慶應義塾大学大学院教授・曽根泰教氏が2016年5月26日、27日に行われた伊勢志摩サミットを総括する。曽根氏は、議長国の首相として安倍晋三氏の根回しは評価に値するとしながらも、安倍首相の主張にはある大きな問題点が見られると指摘する。
時間:9分24秒
収録日:2016年6月1日
追加日:2016年6月9日
カテゴリー:
≪全文≫

●安倍首相の周到な準備が目立った伊勢志摩サミット


 伊勢志摩サミットが終わりまして、この評価をどうするかということが話題になっています。少し古い話から申し上げますと、第一回のランブイエ・サミットは、ジスカール・デスタン仏大統領の頃ですが、1975年に行われました。オイルショックの後で、世界経済をどう建て直すかが課題で、日本からは三木武夫首相が参加しました。その時たまたま、私は竹下登さんとある会合で同席したのですが、竹下さんが「日本の政治家はいつかこのような場所に出ていく準備をしておかなければいけなくなったんだね」としみじみ言ったことを思い出します。

 当時は、円高と円安の意味がよく分からない政治家がいました。特に円高で円表記の数字が小さくなっていくと、「どうしてそれが円高なのか。小さくなっているじゃないか」というような反論があったりする、そういう時代でした。それに比べると今回の伊勢志摩サミットで、安倍晋三首相はかなり周到に準備をして、根回しをしたのです。そういう意味でいうと、日本もサミットに慣れてきたということになります。


●日本とG7各国首脳の経済認識のズレが明らかに


 ただ、安倍さんが持っている国際経済に対する認識とG7の首脳が持っている認識は、必ずしも一致していなかったと思います。今回のサミットは、久しぶりに世界経済を論ずる場所であったわけですけれども、そこで考え方の違いが明らかになりました。特にドイツのアンゲラ・メルケル首相、あるいはイギリスのデーヴィッド・キャメロン首相などが、安倍さんが世界経済の下振れリスクに対する財政出動を主張したことについて、むしろそれを否定するというか、考え方の相違も明確になったサミットではないかと思います。「景気が悪い時には財政出動なんだ」という説に対して、「日本は財政出動できる状態なのか」と口には出しませんが、これだけの財政赤字を抱え込んでいる日本が、事あるごとに「財政出動」ということを唱えることの矛盾、滑稽さを思った首脳がいたのではないかと思います。

 もう一つは、「リーマンショックのような危機」ということを安倍さんが主張したことです。何のために主張したかというと、リーマンショック並みの危機というのは、消費税増税の再延期と結び付くからです。ただし、その時に出した資料は、コモディティの下落傾向であって、リー...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
戦略的資本主義と日本~アメリカの復活に学ぶ5つの提言
戦略的資本主義とは?日本再生へアメリカに学ぶ5つの提言
片瀬裕文
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
「進化」への誤解…本当は何か?(4)ダーウィンの進化論と自然淘汰の理論
『種の起源』…ダーウィンとウォレスの自然淘汰の理論
長谷川眞理子
逆境に対峙する哲学(9)先人の知恵という友
本居宣長も白隠もハイデガーも友となる――大切なのは?
津崎良典
歌舞伎はスゴイ(2)市川團十郎の何がスゴイか(後編)
歌舞伎十八番を定めた七代目市川團十郎、一番モテた八代目
堀口茉純
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(6)秀吉との信頼関係と秀長の軍事能力
文武両道の名将…大大名たちを魅了した秀長の器量とは?
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
「次世代地熱発電」の可能性~地熱革命が拓く未来
地熱革命が世界を変える――次世代地熱の可能性に迫る
片瀬裕文
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
トランプ政権と過激化した米国…MAGA内戦、DSAの台頭
東秀敏
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
戦略的資本主義と日本~アメリカの復活に学ぶ5つの提言
戦略的資本主義とは?日本再生へアメリカに学ぶ5つの提言
片瀬裕文