寄付の文化を育てるには
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
モントレーベイ水族館は必見!文化は寄付によって育つ
寄付の文化を育てるには
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
政治学者で慶應義塾大学大学院教授・曽根泰教氏による「寄付の文化」論。日本でも寄付という行為がようやく根づき始めたが、曽根氏は「見返りを求めるようではまだまだ」と手厳しい。寄付先進国アメリカの教会や大学、美術館、水族館の実例を交えながら、寄付と文化の関係を論ずる。
時間:8分47秒
収録日:2016年4月27日
追加日:2016年6月24日
カテゴリー:
≪全文≫

●寄付の原型


 この話は、タイトルを付けると“寄付の文化を育てるには”となります。「日本には寄付の文化は育たない」「日本はあまり寄付になじみがない」という意見がありますが、必ずしもそういうことはありません。ただ今、寄付というと、もっぱら「ふるさと納税」という、納税なのか通販をやっているのかよく分からない話になります。あれは見返り、つまりいくら納税すると税が控除されてどこかの特産品がもらえるということで、一種のテレビ通販のような話が普及していますけれども、寄付とは本来そういうことでは多分ないだろうと思います。

 寄付は何の見返りを期待しているのか。政治に対する寄付もそうですけれども、寄付に見返りはあるのか。その見返りとは、一番いい例が自己満足でしょうが、ある種の売名行為かもしれません。ですから、今、もっぱら寄付をした人に対する不謹慎だという批判、あるいは不謹慎自警団、不謹慎狩りを行うという、寄付をした人の足を引っ張る、攻撃をするという行為がたくさん起こっているのです。私が言う「寄付の文化を育てる」ということと逆の現象が起こっていて、非常に嘆かわしいわけですが、そもそも、見返りを期待する寄付は、寄付の原型ではないと言えます。むしろ自尊心の方があり得るでしょう。


●教会の献金にみる寄付と税金の関係


 その寄付の原型を見た事例としてどういうものがあるかといいますと、それこそ昔、クリスマスの時期にアメリカの南部を歩いたときのことです。キリスト教プロテスタントのメソジストかバプテストか定かではありませんが、あまり豊かではない宗派の教会で、寄付する人が献金袋にお金を入れることはよく知られていました。私はキリスト教徒ではないのですが、子どもの頃、教会が経営する幼稚園に通っていたため、小学校半ばまで日曜学校に通ったことがあります。ですから、「献金する」ということはよく分かっているのですが、実は小切手を寄付するのです。小切手を寄付するという行為はよく分かるのですが、小切手にソーシャル・セキュリティー・ナンバー(社会保障番号)を書き込むのです。

 これを見て、「あー、そうか。これで税の申告のときに控除してもらおうという一般的な風潮があるのか」と思いました。一般的な寄付と税金の関係はそうなっているのか、少額であってもソーシャル・セキュリティー・ナンバーを書き込むという習...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(1)「プラチナ社会」構想と2050年問題
5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現
小宮山宏
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(5)「チーム戦と新規ビジネス」の要点
「土地勘のあるところ、自分たちの武器を持っていく」
水野道訓
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子