●政治家の才覚・その1~伊藤博文~
(安倍晋三さんが5年間の間、ものすごく勉強したかどうかは分かりませんが)やはり、安倍さんは生まれつき頭がいい。お母さんがそうですから。 安倍晋太郎夫人で、岸信介さんの娘の安倍洋子さんです。ですから、その血だと思います。
伊藤博文という人はものすごく頭がいいけれども、その上に体力抜群なのです。1日4、5時間の睡眠でいくらでも足りたというし、いつでも機嫌がいいのです。ですから、いつでも疲れていない。明治天皇が、「あの健康さは異常だ」「山県有朋が病気ばかりしているのも異常だが、伊藤が病気しないのもあれは異常だ」とおっしゃったそうです。
安倍さんの頭は、もしかしたら伊藤博文と一緒かもしれませんが、健康の面では伊藤にかなわない。ですから、使える時間は短いはずです。それにもかかわらず、あれだけできるというのは、頭がいいのでしょうね。
●政治家の才覚・その2~外務大臣・東郷茂徳と陸奥宗光~
他にあれくらい頭のいい人はと言ったら、総理にならなかった人では、例えば、東郷茂徳外務大臣ですが、あの人は頭が切れる人ですね。私は外交官しか知りません。
それに、陸奥宗光さんは頭がいいです。東郷よりも上です。外務大臣で言えば、陸奥ですね。 陸奥を上回る人はいません。小村寿太郎などはずっと下です。 小村ぐらいの人間はごろごろいます。 陸奥となると、あの人はルネッサンス的天才ですからね。それから哲学、政治学、全ての理解ですね。ベンサムの理解。私は妙なものを持っていまして、彼が獄中で書いたということになっているものの原本を持っています。
●政治家の才覚・その3~陸奥を見出した西園寺公望~
陸奥を本当に見出したのは、まず坂本龍馬、それから伊藤博文、それから西園寺公望です。 勝海舟が本当に惚れ込んでいるのは西郷隆盛ですが、勝海舟から言わせると、陸奥宗光は一介の才子というような感じです。もちろん陸奥のことを認めていますが、でも才子なのです。
陸奥を本当に認めたのは 坂本龍馬、 伊藤博文、それから西園寺公望です。西園寺公望は、陸奥が死んだ時に本当に落胆しました。陸奥は将来、自由党の総裁になって、政友会の総裁になって、総理大臣になると周囲は思い、育てようと思っていたのです。西園寺は、「薩長のやつらは皆、たたいても死なないようなやつばかりなのに、どうしていいやつが先に死ぬのだ」と言いました。
●もし西園寺公望が事前に三国同盟の相談を受けていたら
西園寺公望というのは、別に再評価した本がないですね。
近衛文麿と松岡洋右は、西園寺に相談しないで三国同盟を結んでしまいます。変な話ですが、「同盟を結んだなどと言うと、ご老公にお気の毒だ、だからご老公に話さないで文面を結ぼう」という理由からです。しかし、あれをもし事前に話していたら、西園寺は大磯から出かけていって、昭和天皇に直訴して、必ずつぶしています。ですから、結んでから西園寺に報告したのです。 西園寺が死ぬ前の年で、もう80いくつか90歳で、頭は矍鑠(かくしゃく)としていたのですが、周りの女性に「これでお前たちももう畳の上で死ねないな」と言ったそうです。それは戦争になるからです。
もっとも、その時に西園寺が反対していたら、軍のテロに遭っている可能性はありますね。二・二六事件の時も襲撃リストに入っていたのですが、あの時はもう地方にいたから、そこまで行けなかったのでしょう。 しかし、西園寺がわざわざ大磯から出てきて天皇陛下に直訴したら、軍のテロに遭っている可能性があって、その時に軍を鎮圧すれば、二・二六事件と同じことになったでしょう。
それにしても、西園寺に黙って条約をつくったというのは、近衛と松岡はめちゃくちゃですね。