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島田晴雄が評価する第一次アベノミクス

2017年世界と日本(7)第一次アベノミクスの評価

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
第一次アベノミクスは2013年初頭から2015年9月に行われた「デフレからの脱却」を目指す政策だった。その結果がしっかりと検証されないまま、第二次アベノミクスへ突入した安倍政権だが、公立大学法人首都大学東京理事長・島田晴雄氏による評価はどうなのだろう。(2017年1月24日開催島田塾第142回勉強会島田晴雄会長講演「2017年 年頭所感」より、全11話中第9話)
時間:12:56
収録日:2017/01/24
追加日:2017/05/13
≪全文≫

●異次元緩和をやり抜く黒田長官の金融ザムライぶり


 では、第一次アベノミクスのいろいろな問題について、評価(レビュー)を行っていきましょう。

 まず金融については、国民を元気付ける表面的効果はありましたが、結局、インフレマインドを醸成するほどのインフレには至りませんでした。黒田東彦総裁は第二次バズーカと呼ばれる金融緩和を行い、世界からも驚かれましたが、効果は一瞬でした。結果的にマネタリーベースが非常に増え、全部合わせるとGDP比の7割ほどを占めます。アメリカがあれだけ金融緩和しても2割でやめたのと比べると、大丈夫なのかという感じはします。

 しかも2016年1月29日にマイナス金利の発動です。これにも、国民は驚きました。これは銀行が日銀に預けている当座預金のごく一部についてなので、実際はマイナーなことなのですが、シンボリックなインパクトが大きいため、世界からも注目されました。金利が安くなれば不動産などの資産商売にはとてもよくなります。

 しかし、それでもインフレにはなりません。ところが黒田氏は必ずなるとサムライのような発言をしています。2016年秋に金融政策決定会合が開かれ、皆に「どうするんだ」と迫られて、「長短金利を政策運営上の目標とする、新たな金融緩和の枠組みを導入する」と言いました。

 これは何かというと、「イールドカーブ」といって、短期と長期でリターンが変わる仕組みです。今は長期金利が下がってほぼ平坦になっているカーブをなるべく長期金利が高めに健全化していけば、金融機関の利益にも結び付くということです。同時に、非常に苦境ではありますが、インフレが2パーセントになるまでは異次元緩和をやり抜く「オーバーシュート型コミットメント」も宣言しました。世間からは大変な決断であることが評価され、「日銀も頑張るものだ」と、特にプロ受けしました。


●募る巨額のベースマネーと出口政策への不安


 しかし、われわれ素人にとってはどうでしょうか。GDPの7割から8割にも当たるベースマネーの規模は不安を与えます。アメリカは3回にわたって日本の何倍もの巨大なベースマネーを出しましたが、GDP比で見れば2割程度です。それも非常に慎重なやり方で、10年ぐらいかけて市場と対話しながら、調整して景気が良くなってから吸収していったのです。実際にアメリカは今とても景気がいいですが、日本の場合、いつよくな...
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