●トランプショックによる変化とその原因
最後はやはり、(日本の針路についての)プランAとプランBは、言わないわけにはいかないと思います。
トランプショックで何が変わるかというと、要するに他国間協議や協定、共通ルール、透明性、こうしたことを全部飛ばして、「二国間で決めるんだ」と言っているので、不安定で予測が非常に難しくなります。それから、安保同盟は全く軽視されています。また、オバマ戦略も全部否定しています。クリミア、ウクライナ、シリア(におけるロシア既得権は全て)承認ですが、中国戦略としては、「たたきつぶせ」という具合なので、ちょっとどうかなと感じています。
ここで、われわれが本当に考えなければいけないこと、今こういうショックを与えられて何を考えるべきかということについて、実はテレビを見ていても、また新聞を見ていても、はっきりいって大した議論は見当たりません。本当に建設的な議論がないのです。やはりトランプ大統領は分からない。そうした人がなぜ民主主義のアメリカから出てくるのか、よく分からないのです。
なぜそんなに分からないのか。例えば、ウラジーミル・プーチン大統領は、このシリーズレクチャーで生い立ちからずっと話したので、分かったでしょう。一回、世界の大帝国だったロシアが崩壊したけれども、領土の交渉をしながらここまで復活してくるということで、よほどの愛国者です。エンゲラ・メルケル首相もそうです。皆、かなり分かってやっています。
●安保条約でアメリカに全てお任せ状態だった日本
われわれは、なんと65年間考えてこなかったのです。なぜか?――日米安保があるからです。1952年に日米安保条約が発効したでしょう。あれから(思考が)止まっているのです。なぜなら、アメリカにお願いすれば全部、済んだわけですから。そうして、日本は、戦後70年間、軍隊の規模でいえば世界で3番目あるいは4番目に大きいという自衛隊を持っていて、1発も実弾は撃っていないと言っても、そんなことは誇りにはなりません。
要するに、全部アメリカがやってくれていたのです。しかも、非常に友好的だったのです。つまり冷戦構造ですから、スターリンの巨悪に対して、日本が最前線で同盟国として堤防になってくれれば全ていいということで、アメリカは日本に経済援助も軍事援助も、何もかも行ったのです。