「消費増税再延期」を考える-三つの手法と三つの論点
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
なぜ安倍首相は「消費増税再延期」を選択したのか?
「消費増税再延期」を考える-三つの手法と三つの論点
伊藤元重(東京大学名誉教授)
学習院大学国際社会科学部・伊藤元重教授が、安倍内閣の選択した「消費税増税再延期」について多角的な視点から解説する。伊藤氏が特に注目したのは、三つの手法と三つの論点。この3×3の方法で、消費税増税再延期という出来事の背景、根底を読み解き、日本財政の将来を論じる。
時間:15分58秒
収録日:2016年6月16日
追加日:2016年7月11日
カテゴリー:
≪全文≫

●消費税増税再延期が引き起こした議論


 安倍晋三首相は先日、消費税の8パーセントから10パーセントへの引き上げを、来年(2017年)4月から2019年10月へ、ちょうど2年半延期すると発表しました。この発表は少し前から、そういうことがあるだろうと予想はされていたものの、やはり国内に非常に大きな議論を引き起こしていることは事実だろうと思います。

 日本の財政状況は非常に厳しいものがあり、一刻も早く消費税を上げて歳入を確保しない限りは、財政健全化が遅れるだけでなく、過大な債務が将来において非常に大きなリスクになるのではないか。さらに言えば、赤字財政を続けていろいろな歳出を行っていくということは、将来世代に対して「負の遺産」を残すという意味でも非常に問題が大きいのではないか、という議論は当然あるわけです。

 この財政全体の問題を詳しく議論するにはそれなりの時間が必要なのですが、今日はこの安倍首相が選択した「2年半の延期」の狙い、あるいはそれによってこれから考え得る重要な論点について、申し上げたいと思っております。


●財政健全化のための三つの手法


 この問題を議論するためには、3×3、つまり三つの手法と三つの論点が必要になってきます。最初の「3」の方ですが、財政を健全化していくためには三つのチャネル、あるいは三つの手法があるというわけです。

 一つは「増税」、つまりは消費税や所得税などの税率を上げることによって、歳入を確保するということ。これが第一の方法です。二番目は「成長」と言っていいと思うのですが、経済成長率を高めたり、あるいは成長自身がなくても物価が上がっていくことによって、名目上の所得が増えていく、それによって税収が増え財政にプラスになるという面があります。三つ目は「歳出の改革」です。社会保障だとか、社会資本整備だとか、地方財政だとか、こういった財政の支出のところを厳しく見直すことによって歳出を抑えていく。この三つを使って財政をどう安定化させるか、ということが問われているのです。


●財政健全化に関する三つの論点


 もう一つの非常に重要な視点は、日本の財政には三つの異なった課題があるということです。

 一つは、今足元で毎年大きな財政赤字が出ているわけですが、一刻も早くこの財政赤字を減らしていく、黒字にもっていくということ。これが第一の論点...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
トランプ政権と過激化した米国…MAGA内戦、DSAの台頭
東秀敏
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史

人気の講義ランキングTOP10
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将
聖徳太子「十七条憲法」を読む(1)十七条憲法を学ぶ現代的意義
聖徳太子の「和」は議論の重視…中華帝国への独立の気概
賴住光子
これから必要な人材と人材教育とは?(2)AI時代に必要とされる能力
AI時代に必要なのは「問いを立てる能力」…いかに育成するか
柳川範之
ソニー流「人的資本経営と新規事業」成功論(3)「現場の熱」こそ多角化の要点
新規事業を成功させるリーダーとは…上意下達はなぜダメか
水野道訓
これからの社会・経済の構造変化(1)民主主義と意思決定スピード
フラット化…日本のヒエラルキーや無謬性の原則は遅すぎる
柳川範之
こどもと学ぶ戦争と平和(1)私たちに必要な想像力と戦争体験
なぜ戦争が起こるのだろう…大切なのは想像力と生の声
小原雅博
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(6)政治と経済をつなぐ公共哲学
どのような経済レジームを選ぶか…倫理資本主義の可能性
齋藤純一
AI時代と人間の再定義(7)AIと倫理の問題と法整備の可能性
人間のほうがAIに寄ってしまう?…関係性と倫理のあり方
中島隆博
編集部ラジオ2026(2)「時代の大転換期の選挙」特集を解説!
「大転換期の選挙」の前に見ておきたい名講義を一挙紹介
テンミニッツ・アカデミー編集部
医療から考える国家安全保障上の脅威(5)日本の医療の問題点と提言
なぜ日本の医療はテロに対応できないのか?三つの理由
山口芳裕