●センサーでビジネスチャンスにつなげるIoT
今、技術革新がいろいろ起こっている中で、「IoT」がいろいろなところで話題になっています。“Internet of Things”ということで、「モノのインターネット」と訳されていますが、モノだけではなく、いろいろなものがセンサーにつながることによって、社会や経済が変わってくると言われています。
これは多くの人が感じていることです。先日、お台場の東京ビッグサイトで、10万人以上の人が来場するという工作機械業界の展示会が開催されました。そこでお話しした担当者の方も、「今年のキーワードはIoTだ」と仰っていました。具体的には、工作機械に全部センサーを付けて、そのセンサーで何ができるかということが大きなポイントになる、という話でした。
ご存じのように、コマツ(株式会社小松製作所)は、建設機械にセンサーを付けることによって、例えば中国に売った建設機械がどこで稼働しているかとか、実際に動いているかとか、あるいは故障などのトラブルがあるとしたら、それはどこで起こっているのか、といったことをリアルタイムで分かるようにすることで、ビジネスを広げていきました。つまり、「お客さんとつながる」ことの中から、その延長線上にビジネスが出てきたのです。
建設機械がつながるのなら、農作業の機械もつながってきます。例えば、農耕器具などでも単に耕作するだけでなく、作物の状態やその他いろいろなことが分かってくるということです。あるいは工場自身がセンサーでつながることによって、工場のいろいろなオペレーションや運営を連動させていくことも可能で、ドイツで今、実験的に行われている“Industry 4.0”も、その形の一つです。モノづくりも孤立した工場や機械の中で、それぞれが運営するのではなく、つながっていくことで得られる情報やシステムを共有することになるのだろうと思います。
●定期購読的なビジネスモデルを最近「サブスクリプション」と呼ぶ
そういう中で、今回、IoTに関して一つ話題を提供したいのですが、以前にも同じコンセプトでお話ししたかと思います(2016年9月17日配信「サブスクリプション・ビジネスーデマンドサイドから考える」)が、もう一度ぜひお話ししてみたいと思うのは、いわゆる「サブスクリプション」(subscription)というビジネスモデルについてです。
サブスクリプションとは日本語に訳すと、「定期購読」というような意味になります。新聞を例にとりますと、駅で100円~150円を払って新聞を買ってくれるお客さんもいますが、新聞社から見れば毎月定期購読してくれるお客さんの方がありがたいわけです。つまり、定期購読をしてもらうことによるいろいろなビジネス上のメリットがあるということで、この定期購読的なビジネスモデルのことを、サブスクリプションと最近は言うらしいのです。なぜこれが広がってきたのかというと、まさにお客さん、あるいは商品と企業の間を、IoTなどを使って結びつけることができるようになってきたからです。
●「モノを売る」から「モノを使ってもらうサービスの継続」へ
サブスクリプションの考え方をもう少し別の言い方ですると、モノを売るだけのビジネスではなかなか利益、利潤が上がりにくいときに、モノを売るのではなく、モノを使ってもらうサービスを提供し続ける、という形にサービスを変換できないだろうかという考え方なのです。
サブスクリプションの世界で一番成功したケースは、「ネットフリックス(Netflix)」という映画やドラマなどの動画配信サービスです。これがまさにサブスクリプションなのですが、一方で映画というソフトを例えばDVDのようなパッケージに収めて売るのは、一回きりのことで、毎回、映画ごとに売っていくという形です。ネットフリックスの場合は、契約さえしておけば、インターネットなどを通じて映画は見放題です。これは顧客から見たらそうなのでしょうが、ネットフリックスから見れば、例えば仮に毎月980円だとしたら980円、つまり映画一回分ほどの料金を払ってくれるお客さんが、ずっと永続的にいるということになります。特にデジタル商品である映像の場合には、原価費用ゼロということもありますから、毎月980円払ってくれるのなら、何本でも見てもらって構わないということになってくるわけです。
こういうことが、だんだんと起爆剤になって、いわゆるモノを売るのではなくサービスを継続して提供し続けるということを、多くの企業が意識し始めていると思います。
●設備ではなく浄水サービスを継続して提供する栗田工業
IoTとは直接関係はありませんが、これはサブスクリプションビジネスの典型だと私が思うのは、栗田工業という会社の例です。栗田工業はご存じのように、日本を代表する水を浄化する設備の会社です。10...