●戦略経営に必要なのは、自己と他者を知りビジョンを示すことだ
次に、「戦略経営のフレームワーク」という話に移りましょう。戦略経営とはいったい何でしょうか。戦略経営を考える上で大切なのは、まず自己を知り、他者を知ることです。自分のことを知らなければいけないし、さらに自分を取り巻いている周りのことも知らなければいけない。これが基本になります。自分はいったいどんな強みと弱みを持っているのだろうか。自分の中には、どんなリソースがあるのだろうか。こういうことを知らないといけないと思います。これが内部環境です。
さらに、先ほど出てきたようなライバルのことも知らなければいけない。自分を取り巻いている周りや市場には、どんな問題があるのか。サツマイモを洗って泥を詰まらせているという問題を抱えている農民がいるかもしれない。どんなニーズがあるのか。そういったことに敏感でなければいけない。重要なのは、これら内部環境と外部環境を把握し、両者をうまく適合させることです。チャンスを見つけて、そこに自分の持っている強いリソースを投げられるかどうかです。
そのためにはやはり、ビジョンが大事だと思います。企業として何をしたいのか。どうなりたいのか。社会に対してどう貢献したいのか。そういうものがないと、なかなかうまくいかない。先ほど競争優位であるとか持続的競争優位であるとか、あるいはレントに関する話をしましたが、レントというのは目的ではなくて、結果です。大切なのはやはり、いかにしてビジョンを実現していくかということではないか。そしてビジョン追求の結果、良好なパフォーマンスが得られればいいのです。
●二つの戦略経営論
こうしたことを考える上で、必要な戦略経営のフレームワーク(眼鏡)があります。代表的な眼鏡は二つです。一つは、マイケル・ポーターが提唱したものです。皆さんの部屋にも、もしかしたら彼の本が蔵書としてあるかもしれません。ポーターは「ポジショニング・アプローチ」という考え方を唱えます。それは「自分の周りを特に知りましょう」という考え方です。それに対してジェイ・バーニーは、「リソースが大事だ」と言います。自分や自分の所属する会社にどんなリソースがあるかということが大事だということを、バーニーは言います。これが、「資源ベース論」という考え方です。いずれにしても戦略というのは...