●経営者個人にもダイナミック・ケイパビリティは求められる
ダイナミック・ケイパビリティは主に組織の話ですが、これをもう少し具体化して、経営者自身の話に落とし込んでみようということで生まれたのが、DMC、ダイナミック・マネジャリアル・ケイパビリティです。経営者のダイナミック・ケイパビリティという話ですが、これはどういうことか。
まず経営者が「認知」するということです。世の中に対して、いろいろなものを吸収していく心構えです。いろいろな問題に注意を払えるかどうか、問題解決に積極的に取り組めるかどうか。あるいは推論することです。他のビジネスモデルや他社が成功しているビジネスモデルを学んでみようとか、言葉やレトリックを駆使して人々を説得しようとか、コミュニケーションを取ろうとか、そういったことを心掛けているかと思いますが、そういう心構えが経営者の「認知」です。
次が「人脈」です。経営者はいろいろな社会関係資本をつくり、良い評判を得ていく。「あの人はいろいろな意見や面白い意見をいつも言ってくださる」「あの人はいつも助けてくださる」「ゴルフばかりやっているわけではなく、すごく面白いことを教えてくれる」、そういう人脈です。
三つ目が経営者の「人的資本」です。これは自身の経験やバックグラウンドです。学歴や学閥が障害になるか、あるいはプラスになるか分かりませんが、でもそういったものがあることで、いろいろな人と巡り合うことはあるでしょう。自分で同じ大学の同窓会以外にも足を運んで、様々なところに行ってみるのも大事かと思います。
こういった心構えでは、最初の心構えが非常に大事だという気がします。その点で、ホンダという企業は面白いなと思います。ホンダは、本田宗一郎さんと藤沢武夫さんが二人三脚で経営してきた企業です。経営とは何ですかといったとき、「経営は布みたいなものだ」と。こういうレトリックを使います。「経営は布である。縦糸と横糸があり、縦糸は変えてはいけない。でも世の中は変わるのだから、横糸は変えてもよろしい」、まさにそうだと思います。シグネチャ・プロセスとビジョンがあり、変えていいものがあるという話をしており、まさにそれを実践してきた人たちです。
●イケアの揺るぎないビジョンとは
次に事例としてお話ししたいのは、イケアという企業です。ポーターの話だと、...