●新たなコーヒー文化を「感知」したハワード・シュルツ
では、それぞれの要素である「感知」「捕捉」「転換(再配置)」について見てみたいと思います。まず「感知」は、「探索によって気づきを得る」ことです。どれだけの人と会うか。どんな業界の人と会うか。そこでは越境できているか。そういった話だと思います。国内外のビジネスチャンスを探り当て、企業を取り巻いている内部環境を知り、外部環境を知り、方向性を示そう。そういうことです。
スターバックスの中興の祖であるハワード・シュルツという人がいます。彼は創業者ではありません。もともとはゼロックスにいた人です。ゼロックスから雑貨会社に移った彼は、ある時イタリアに行き、そこでコーヒーショップに入りました。そのコーヒーショップが気に入ったといって、彼はそこに勤めるようになります。彼がイタリアに行った時に感動したのはエスプレッソバーでした。
そこでは、エスプレッソが生活の一部になっている。この空間も、イタリア人にとっては大事な生活の一部である。だから僕はそういったビジネスをやりたい。といっても、当時、彼はただのサラリーマンでしたから、オーナーに「こんなことをやりたい」と言います。ところがオーナーは、それを断ります。そこで彼は、スターバックスを一度辞めて、その後スターバックスを買収します。そうやって、彼自身のやりたいことをやります。ただコーヒーを売るのではありません。そこに勤める人をつくるのです。「コーヒー1杯出せるだけではしょうがない。何百杯、何千杯、何万杯とおいしいコーヒーを作り続けられることができるように、人をつくるのだ」と彼は言います。「僕がやりたいのは、コーヒービジネスではなく、ヒューマンビジネスだ。人々の心を元気づけたり、育んだりと、そういったことに、僕は携わっていきたい」、これをビジョンにして彼はやっていったわけです。
●もうかるビジネス・エコシステムを構築せよ
次に「捕捉」です。問題に気づいたり、ビジネスチャンスに気づいたりというだけでは困ります。そこから一歩踏み出さなければいけないわけです。そのためには投資しなければいけないし、リスクも負わなければいけません。新たなビジネスモデルをつくるということです。そのためにはどういった人が必要か、どんな知識やテクノロジーが必要かを知り、それを動員しなければい...