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4月後半にオバマ大統領が日本を国賓として訪問しました。そして、二泊した後に、その足で韓国に行って朴槿恵大統領と首脳会談を行い、その後アジア歴訪の旅に出るのですが、とりわけ日韓を歴訪したオバマさんの外交の成果についてお話ししたいと思います。
オバマさんは今回、国賓としての来日でした。国賓というのは天皇陛下がお迎えし、宮中の晩さん会も行われ、最大のもてなしをするということなのですが、これは日本側が強く希望しまして、「どうせいらっしゃるなら国賓としていらしてください」ということだったわけです。ただ、それには応じたのですが、国賓としてはいくつかの点で異例であったかなと思います。
日本に二泊したのですが、夜到着して、慌ただしく二泊して、そのまま韓国へ向かうという、日程的にも非常に慌ただしいものでした。また、国賓ですと普通は迎賓館に泊まり、当然そういうオファーもしたのですが、これを断ってホテルオークラに泊まったということ、あるいは初日の夜に安倍総理との銀座のすし屋での会食はありましたが、二日目の首脳会談の後の午餐会を、普通は首脳会談の後に総理がもてなす昼食会として行うのですが、それもなしで終わったということ、それから何よりも、ミッシェル夫人を連れてこなかったということが挙げられます。これはアメリカ側の事情があったということも伝えられていますが、国賓としては少しさびしい、ある意味で非常にビジネスライクな旅であったということが言えると思います。
なぜなのかは、いろいろな事情があったのでしょうけれども、日米関係、特にオバマさんと安倍さんの関係が従来からそれほど緊密なわけではなかったのです。そこにきて、昨年末に安倍さんが靖国神社を参拝したことに対して、異例とも言える「失望」という強い表現で、アメリカ大使館や国務省が声明を出したということで、非常にギクシャクした感じがありました。国賓としていらしたことによって、それを修復するという意味はそれなりにあったのですが、そういうぎこちない中での国賓としての訪問だったという辺りが、全体を少しビジネスライクなものにとどめたような気がします。
それでも、安倍さんとしては「大変成果があった」と言い、おすし屋さんで初日に会って、オバマさんが「人生の中で一番おいしいお寿司だった」と言ったそうですが、多分「おすしがおいしかった」ということで、必ずしも「会食が人生の中で一番素晴らしかった」ということではなかったのでしょう。けれども、安倍さんとしては、あのような形でもてなすことができ、そして、それ以上に何よりも「尖閣諸島の問題でアメリカが安保条約で守るのだ」と、オバマさんの口から、つまり大統領の口から初めて明確に言ってもらい、それが共同声明にも盛り込まれたということで、「これは非常に画期的である」と評価しているわけです。あるいは、集団的自衛権を日本が行使できるように検討中だということも、オバマさんがこれを支持歓迎し、それが共同声明に盛り込まれたということで、安倍さんとしては非常に良かったと評価しているわけです。
私は、その意味は確かに小さくないと思います。集団的自衛権に関しては、むしろ従来はアメリカのほうが要求してきたことだったのです。最近は安倍さんがそれに非常に積極的なのに対して、原則は自分たちも求めてきたから良いのだけれど、この問題がいろいろな歴史認識の問題と相まって中国や韓国を非常に刺激していることについて神経を使っているので、アメリカのほうが一歩引いていたのです。それを今度の首脳会談で、「従来アメリカが求めていることではないか」ということで、こういう言質を取ったということで、それを良しとするかどうかは評価が分かれるところでしょうけれども、そういう意味をもった声明だったと思います。
ただ、オバマさんは尖閣諸島への安保の適用を単純に明言したわけではなく、あるいは集団的自衛権のところも単純に歓迎したわけではないので、そこは特に「中国に対する気配りを忘れてほしくない」ということを、安倍さんに注文を付けています。尖閣については日中両国で外交的に平和的に解決するように、特にお互いが刺激し合うようなことをしないように、安倍さんにも釘を刺しました。そのことについては、記者会見でも「私は特に安倍さんに申し上げました」という形で言及しています。それはもちろん、具体的に「尖閣をめぐって刺激するな」ということなのですが、日本はそういうことをしていないわけで、むしろこれは靖国問題を念頭に言ったのではないかと私は思います。安倍さんは記者会見でも、靖国参拝の自分の意図は決して間違ったものではないということを説明していましたが、それを何となく冷ややかに見ていたオバマさんの表情が印象に残るのですけれども、「決してつまらないことで中国...


