●「対内直接投資」の数字が非常に低い日本
今の安倍内閣の中でかなり集中的に議論されているテーマは、「対内直接投資」についてで、つまり、海外から日本への直接投資をもっと増やすことは非常に大事であるということが議論の中で言われているのです。
直接投資は、間接投資と区別されて使われる言葉で、企業が実際に生産するとか、あるいは販売ネットワークを構築するとか、研究開発の活動をするなど、そういった企業の活動を前提とした国際投資です。単に株式や債券を買って金融運用をするような投資を間接投資というのですが、これと区別して議論されています。
今、日本が求められているのは直接投資で、ご存じのとおり、日本に入ってきている直接投資の金額は非常に少ないのです。いろいろな統計があるようですが、過去から今まで行われてきた投資を、減価償却などいろいろな調整をした上で、現時点における海外から日本への直接投資の累積金額は、GDPの経済規模でいうと、おそらく3パーセント台だろうということです。これは主要な海外の国から見ると圧倒的に少なく、欧州は域内からの数字を入れるかどうかによって違うのですが、おそらく10パーセントから30パーセントくらいという非常に高い数字になっています。つまり、「対内直接投資」の数字は日本だけが非常に低いのです。これは日本経済にとって、やはり好ましくないことだろうと思います。
●直接投資の相互性~先進国はその傾向が強い~
直接投資については、経済学の世界ではいろなところで議論されることが多いのですが、貿易と同じような側面を持っています。つまり、出ていくものと入ってくるものがそれなりに同じような規模になるという性質があるわけです。
貿易の場合は、なんとなくお分かりになると思いますが、輸出と輸入があるので、それらの数字の大きさが著しく違ってくれば、貿易収支の赤字や黒字が大幅に出ます。ただ、一般的には貿易収支は縮小傾向で、輸出と輸入は連動していると考えられています。
その理由は明らかで、貿易が行われる背景には、それぞれの国の得意不得意があるため、専門用語で比較優位というのですが、得意なもの、つまり、比較優位のあるものを積極的に海外に売っていって、比較優位のないものを海外から輸入する、という両方向の貿易が起こることによって経済が利益を拡大できるわけです。
直接投資でも、出...