日本経済を元気にする~対内直接投資
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「対内直接投資」の数字が非常に低い日本
日本経済を元気にする~対内直接投資
伊藤元重(東京大学名誉教授)
安倍内閣で集中的に議論が進んでいる「対内直接投資」。海外から日本への直接投資を増やすことの重要性は、先進国での直接投資への伸びを見ても明らかである。日本経済活性化への鍵をなる「対内直接投資」について伊藤元重氏が語る。
時間:14分02秒
収録日:2014年4月25日
追加日:2014年5月1日
≪全文≫

●「対内直接投資」の数字が非常に低い日本


今の安倍内閣の中でかなり集中的に議論されているテーマは、「対内直接投資」についてで、つまり、海外から日本への直接投資をもっと増やすことは非常に大事であるということが議論の中で言われているのです。
直接投資は、間接投資と区別されて使われる言葉で、企業が実際に生産するとか、あるいは販売ネットワークを構築するとか、研究開発の活動をするなど、そういった企業の活動を前提とした国際投資です。単に株式や債券を買って金融運用をするような投資を間接投資というのですが、これと区別して議論されています。
今、日本が求められているのは直接投資で、ご存じのとおり、日本に入ってきている直接投資の金額は非常に少ないのです。いろいろな統計があるようですが、過去から今まで行われてきた投資を、減価償却などいろいろな調整をした上で、現時点における海外から日本への直接投資の累積金額は、GDPの経済規模でいうと、おそらく3パーセント台だろうということです。これは主要な海外の国から見ると圧倒的に少なく、欧州は域内からの数字を入れるかどうかによって違うのですが、おそらく10パーセントから30パーセントくらいという非常に高い数字になっています。つまり、「対内直接投資」の数字は日本だけが非常に低いのです。これは日本経済にとって、やはり好ましくないことだろうと思います。


●直接投資の相互性~先進国はその傾向が強い~


直接投資については、経済学の世界ではいろなところで議論されることが多いのですが、貿易と同じような側面を持っています。つまり、出ていくものと入ってくるものがそれなりに同じような規模になるという性質があるわけです。
貿易の場合は、なんとなくお分かりになると思いますが、輸出と輸入があるので、それらの数字の大きさが著しく違ってくれば、貿易収支の赤字や黒字が大幅に出ます。ただ、一般的には貿易収支は縮小傾向で、輸出と輸入は連動していると考えられています。
その理由は明らかで、貿易が行われる背景には、それぞれの国の得意不得意があるため、専門用語で比較優位というのですが、得意なもの、つまり、比較優位のあるものを積極的に海外に売っていって、比較優位のないものを海外から輸入する、という両方向の貿易が起こることによって経済が利益を拡大できるわけです。
直接投資でも、出...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
岸信介と日本の戦前・戦後(1)毀誉褒貶相半ばする政治家
「昭和の妖怪」岸信介の知られざる実像を検証する
井上正也
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(1)「プラチナ社会」構想と2050年問題
5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現
小宮山宏
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(5)「チーム戦と新規ビジネス」の要点
「土地勘のあるところ、自分たちの武器を持っていく」
水野道訓
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子